ひまわりが咲く場所で
by瑠唯

グラウンドに、悲鳴のような歓声が響き渡る。

視界の端で、アンカーとして走っていた莉緒の体が、まるでもつれるようにしてトラックに沈んでいくのが見えた。

「――莉緒!」

気づいた時には、俺は自分の席を飛び出していた。

クラスの連中が「え、相葉?」と驚く声も、体育教師が「おい、危ないぞ!」と制止する声も、何一つ耳に入らなかった。ただ、心臓が耳の奥で、警鐘のようにドクドクと不気味な音を立てて暴れている。
(嘘だろ。なんでだよ)

頭の中を埋め尽くしたのは、あの最悪な幼い頃の記憶だった。

少しずつ、でも確実に、自分の目の前から光が消えていったあの白い病室。

砂埃の舞うトラックへ滑り込み、莉緒の体を抱き起こす。
腕の中に収まった莉緒の体は、驚くほど軽くて、そして、ひどく冷たかった。

「莉緒! 莉緒、しっかりしろ!」

声を荒らげる俺の手が、情けないくらいにガタガタと震えている。

「るい……くん……ごめん、なさい……」

莉緒は力なく微笑もうとした。けれど、その唇には全く血の気がなく、浅い呼吸を繰り返す胸元は、見ていて苦しくなるほど激しく上下している。

「喋るな。もういいから、喋るな……!」

俺は莉緒の返事を待たずに、その体を横抱きにすくい上げた。
周りの生徒や教師たちが、呆然とした顔で俺たちを見ている。いつもなら「女の子に興味がない相葉くん」として、こんな目立つ行動は絶対に避けていたはずだった。
だけど、今の俺には、周囲の目なんてどうでもよかった。
ただ、この腕の中の温もりが、あの日のお姉ちゃんのように、急に消えてしまうのではないかという恐怖だけが、俺の理性を完全に狂わせていた。

「相葉! 川上を保健室へ運ぶのか? 先生も行く!」

担任の男の先生が慌てて追いかけてくるのを無視して、俺は莉緒を抱えたまま、校舎へと走った。
静まり返った保健室。
ベッドに莉緒を横たえ、保健医が素早くバイタルを測り始める。

「呼吸がかなり荒いわね。熱はないみたいだけど……顔色が異常だわ。すぐに救急車を呼ぶから、相葉くんは先生たちを呼んできて」
『救急車』

その単語を聞いた瞬間、俺の視界が、血の気が引くように真っ白になった。
ベッドの上の莉緒は、薄く目を開けたまま、不安そうに俺を見つめている。
その細い指先が、何かにすがるように、ベッドのシーツをぎゅっと握りしめていた。その姿が、あのひまわり畑の病院のベッドで、静かに息を引き取ったお姉ちゃんの姿と、完全に重なって見えた――。

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