ひまわりが咲く場所で

瑠唯の手作りお弁当

屋上でのあの日から、私たちの距離はもっと、もっと深くなった。
そして今日、叶えるのはリストの3つ目。
「3. るいくんの手作りお弁当を食べる」。

「……本当に作ったからな。味の保証はしねえぞ」

お昼休み。いつものように他の女子たちから「莉緒ちゃん、一緒にお昼食べよ!」と誘われたけれど、今日は「ごめんね、ちょっと図書室で調べものがあって」と断り、人気(ひとけ)のない旧校舎の渡り廊下へとやってきた。
そこで待っていたるいくんは、少し気まずそうに、だけど愛おしそうに、可愛らしいブルーのお弁当箱を差し出してきた。
「わあ、本当に作ってくれたんだ! 嬉しい!」

「うるさい、静かに開けろ。……見栄えは良くないから」

蓋を開けると、そこには少し形の歪な卵焼きと、タコさんウインナー、そして、ちょっと焦げ目のついた唐揚げが綺麗に並んでいた。
普段、台所に立つ姿なんて全く想像できないるいくんが、私のために朝早く起きて、慣れない手つきで包丁やフライパンを握ってくれたんだ。そう想像するだけで、愛おしさで胸がいっぱいになる。

「いただきます!」

まずは卵焼きを一口、パクリと食べてみる。

「……どうだ?」

るいくんが、試験の合格発表を待つ受験生みたいな、ものすごく緊張した顔で私の顔を覗き込んできた。

「うん! ちょっとしょっぱいけど、すっごく美味し
い!」

「しょっぱいか……塩と砂糖、間違えたかも」

るいくんがガックリと肩を落とす。その姿がおかしくて、私は声を立てて笑ってしまった。

「ううん、本当に美味しいよ。私、世界で一番美味しい卵焼きだと思うな」

「お世辞はいいよ」

ぶっきらぼうにそっぽを向くけれど、るいくんの耳の端が、分かりやすいくらい真っ赤に染まっている。
私にとって、この「ちょっとしょっぱい卵焼き」は、どんな高級なレストランの料理よりも、五臓六腑に染み渡る特別な味がした。私のために使ってくれた、るいくんの時間。私のために注いでくれた、るいくんの優しさ。

「るいくん、ありがとう。毎日食べたいくらいだよ」

「……毎日でも何でも、いくらでも作ってやるから。だから、ちゃんと全部食えよ」

「うん、完食しちゃうね!」

二人の笑い声が、冷たい冬の渡り廊下に優しく溶けていく。
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