ひまわりが咲く場所で

進む秒針

手紙を読み終えたあの日から、俺の部屋の机の上には、いつもあの便箋が置かれている。

少しだけ涙の跡で波打った紙に書かれた、莉緒の言葉たち。

『私の分まで、この世界をたくさん楽しんでね』

その約束を守るように、俺は少しずつ、自分の足で前に進み始めていた。

朝、目が覚めて、莉緒のいない世界に一瞬だけ胸が締め付けられる。だけど、カバンに取り付けたネイビーの星に触れると、不思議とすっと心が軽くなった。

「よし、行くか」

学校へ向かう道すがら、いつもの通学路を歩く。

莉緒が隣にいない景色はどこか寂しいけれど、彼女が「綺麗だね」と言っていた朝の青空や、季節ごとに変わる風の匂いを、今まで以上に丁寧に感じるようになった。

教室に入り、自分の席に座る。

隣の席はもう空席になってしまったけれど、そこには今も、莉緒がみんなに振り撒いていた優しい光の余韻が残っているような気がした。


「おい、瑠唯。今日の英語の予習、やったか?」

「あ? ……見せてやろうか」

声をかけてきたクラスメイトに、俺は少しだけ、自然に笑って返すことができた。


莉緒がいない世界は確かに寂しい。


だけど、莉緒が遺してくれた「生きて」という強い願いが、俺の背中をずっと押し続けてくれている。


俺は引き出しの中からノートを取り出し、新しいページを開いた。


莉緒と一緒に描いた未来の続きを、これからは俺自身の手で、一歩ずつ書き留めていくために。
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