ひまわりが咲く場所で

ひだまりの残像

女の子が去っていった後も、俺はその場からしばらく動けずにいた。


「似てる……」


ぽつりと呟いた声が、冷たい冬の空気の中に吸い込まれていく。

さっきの子の、あの泣き笑いの表情。

それは単に「無理して笑っている」という状況が似ていただけじゃない。


目の形や、笑ったときに少しだけ下がる眉の角度、そして何より、その瞳の奥にある「誰かを傷つけたくない」という健気で、どこか頑なな光の宿り方が、驚くほど莉緒に似ていたんだ。


まるで、莉緒が形を変えて目の前に現れたんじゃないかと思ってしまうほどの、不思議な感覚。


「そんなわけ、ないよな……」


俺は自嘲気味に小さく笑って、自分のカバンに下がっているネイビーの星に触れた。


莉緒はもういない。それは、変えようのない事実だ。


だけど、さっきの子の姿を見た瞬間、俺の胸の奥で眠っていた「莉緒を守りたかった」という強い想いが、まるで昨日のことのように一気に呼び覚まされた。


あいつの面影は、こうして不意に、世界のいろんな場所に散らばって俺の前に現れるのかもしれない。


そのたびに、俺は莉緒を思い出して、切なくなって、だけど同時に、あいつと生きた時間の温かさを再確認するんだ。


「莉緒。お前はやっぱり、ずるいよ」


空を見上げると、いつの間にか一番星がぽつりと輝き始めていた。


あの子が見せた一瞬の残像を胸に抱きながら、俺は再び、自分の足で一歩を踏み出した。
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