ひまわりが咲く場所で
あの子と出会ってから、数日が経った。



街はすっかり冬の装いになり、吐き出す息が白く染まる。
俺はあの裏路地を通りかかるたびに、無意識のうちに周囲を見渡してしまっている自分に苦笑した。


「……何やってんだ、俺」


莉緒は莉緒で、あの子はあの子だ。そんなことは百も承知している。
だけど、あの子が最後に見せたあの笑顔――涙をいっぱいに溜めながら、それでも誰かのために小さく咲いたあのひまわりのような泣き笑いが、どうしても頭から離れなかった。

「あ、お兄さん……!」


不意に後ろから声をかけられ、振り返る。
そこには、あの時の女の子が立っていた。泥だらけだったカバンは綺麗に拭かれ、制服の襟元もしっかりと整えられている。

「やっぱり、お兄さんだ。また会えたら、ちゃんとお礼が言いたくて……これ、この前のお礼と、ハンカチです!」

女の子はそう言って、丁寧に洗ってアイロンがかけられたハンカチと、小さなお菓子の袋を俺に差し出してきた。


その真っ直ぐな瞳。少しだけ照れくさそうに、でも一所懸命に感謝を伝えようとする姿が、またしても俺の胸の奥を激しく揺さぶる。


「……わざわざ、ありがとう。ハンカチ、洗ってくれたんだな」


「はい! 本当に、あの時はありがとうございました。私、あれからちゃんと自分の気持ち、言えるようになったんです。だから……もう、大丈夫です!」


そう言って、女の子は今度は無理をせず、心からの笑顔を見せてくれた。
その眩しさに、俺は胸が熱くなるのを感じた。

あの日、俺は莉緒のすべてを救うことはできなかった。

病気という大きな壁の前に、俺の力はあまりにも無力だった。

だけど、莉緒が俺に遺してくれた「優しさ」や「強さ」は、今、目の前のこの子の未来を少しだけ変える力になった。

「そっか。よかったな」

俺はあの子の頭にそっと手を置き、優しく微笑みかけた。


「莉緒。俺、少しは誰かの光になれてるかな」



胸の中で莉緒に語りかけながら、俺は、自分の進むべき道がよりいっそう澄んでいくのを感じていた。
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