ひまわりが咲く場所で
大学の生活にも少しずつ慣れてきた、ある日の放課後。
俺は実習のレポートに必要な参考書を探しに、駅前の大きな書店に立ち寄っていた。
専門書エリアの静かな空間で、目当ての本を手に取り会計を済ませる。カバンを肩にかけ直したそのとき、小走りでエスカレーターの方へ向かおうとしていた一人の女の子と、すれ違いざまに肩が軽くぶつかった。
「あ、すみません……!」
聞き覚えのある、少し高くて一生懸命な声。
相手が落としそうになったファイルを慌てて支えながら顔を覗き込むと、その子も驚いたように目を見開いた。
「あ……! あの時の、お兄さん……!?」
そこに立っていたのは、あの冬の日の夕暮れ、路地裏で泣き笑いを浮かべていたあの女の子だった。
以前見たときよりも少し背が伸びて、制服の着こなしもどこか大人びて見える。何より、あの時は怯えたように曇っていた瞳が、今はとても澄んでいて、まっすぐに俺を見つめていた。
「……久しぶり。元気にしてたか?」
「はい! あの、見てください。私、あれからちゃんと自分の行きたい進路を見つけて、今、受験勉強頑張ってるんです!」
嬉しそうに掲げて見せてくれたファイルには、看護系の専門学校のパンフレットが綺麗に閉じられていた。
その誇らしげで、心からの笑顔。
やっぱりどこか莉緒の面影を感じさせるその表情を見て、俺の胸の奥がじんわりと温かくなる。
「看護か。いい仕事だな。……実は俺も、大学で医療の勉強をしてるんだ」
「えっ、本当ですか!? すごい……! じゃあ、いつか病院で一緒に働けるかもしれないですね!」
「そうだな。負けないように、お互い頑張ろう」
「はい!」
彼女はもう、誰かのために無理に笑う必要のない、自分自身の光でしっかりと前を歩いていた。
短い会話を交わし、今度はお互いに笑顔で「またね」と言って別れる。
去っていく彼女の背中を見送りながら、俺はカバンに揺れるお揃いの星のキーホルダーにそっと触れた。
莉緒。
お前が俺に遺してくれた温かい光の種は、こうして、あの子の中でもしっかりと芽吹いて、新しい花を咲かせようとしているよ。
夕暮れの街に踏み出す俺の足取りは、いつになく軽かった。
俺は実習のレポートに必要な参考書を探しに、駅前の大きな書店に立ち寄っていた。
専門書エリアの静かな空間で、目当ての本を手に取り会計を済ませる。カバンを肩にかけ直したそのとき、小走りでエスカレーターの方へ向かおうとしていた一人の女の子と、すれ違いざまに肩が軽くぶつかった。
「あ、すみません……!」
聞き覚えのある、少し高くて一生懸命な声。
相手が落としそうになったファイルを慌てて支えながら顔を覗き込むと、その子も驚いたように目を見開いた。
「あ……! あの時の、お兄さん……!?」
そこに立っていたのは、あの冬の日の夕暮れ、路地裏で泣き笑いを浮かべていたあの女の子だった。
以前見たときよりも少し背が伸びて、制服の着こなしもどこか大人びて見える。何より、あの時は怯えたように曇っていた瞳が、今はとても澄んでいて、まっすぐに俺を見つめていた。
「……久しぶり。元気にしてたか?」
「はい! あの、見てください。私、あれからちゃんと自分の行きたい進路を見つけて、今、受験勉強頑張ってるんです!」
嬉しそうに掲げて見せてくれたファイルには、看護系の専門学校のパンフレットが綺麗に閉じられていた。
その誇らしげで、心からの笑顔。
やっぱりどこか莉緒の面影を感じさせるその表情を見て、俺の胸の奥がじんわりと温かくなる。
「看護か。いい仕事だな。……実は俺も、大学で医療の勉強をしてるんだ」
「えっ、本当ですか!? すごい……! じゃあ、いつか病院で一緒に働けるかもしれないですね!」
「そうだな。負けないように、お互い頑張ろう」
「はい!」
彼女はもう、誰かのために無理に笑う必要のない、自分自身の光でしっかりと前を歩いていた。
短い会話を交わし、今度はお互いに笑顔で「またね」と言って別れる。
去っていく彼女の背中を見送りながら、俺はカバンに揺れるお揃いの星のキーホルダーにそっと触れた。
莉緒。
お前が俺に遺してくれた温かい光の種は、こうして、あの子の中でもしっかりと芽吹いて、新しい花を咲かせようとしているよ。
夕暮れの街に踏み出す俺の足取りは、いつになく軽かった。