ひまわりが咲く場所で
過去の記憶
「……お姉ちゃん、だったんだ」
莉緒がそっと呟くと、瑠唯は小さく頷いた。夕暮れの光が、彼の端正な横顔をオレンジ色に染めていく。
「7歳の時、病気で死んだ。俺と、ひとつしか違わなかったんだけどな。……その写真、お姉ちゃんが入院してた病院の近くにある、ひまわり畑で撮ったんだ。あいつ、ひまわりが大好きだったから」
瑠唯は自嘲気味に、ふっと息を漏らす。
「病室にいるお姉ちゃんを見てるのが、子供ながらにすごく怖かった。少しずつ動けなくなって、顔色が悪くなって……ある日突然、いなくなる。大切なやつを作ると、失った時に頭がおかしくなりそうになるんだ。だったら、最初から誰も近くに置かない方がいい。女の子に興味がないっていうか……誰かと深く関わるのが、ただ怖かったんだと思う」
ずっと胸の奥に閉じ込めていた秘密を、吐き出すように語る瑠唯。
莉緒を過剰なほどに心配したのも、彼女の顔白さが、かつての姉の姿と一瞬だけ重なって見えたからだった。
「……でも、その写真には、もう一人写り込んでただろ」
瑠唯がふっと思い出したように、少しだけ目を細めた。
「お姉ちゃんの病室の隣に、同じくらいの年の、いつも帽子を被った女の子が入院してたんだ。人見知りな俺に、いつも『るいくん!』って笑いかけてくれてさ。あいつの病室だけは、いつもお見舞いの花でいっぱいで……。お姉ちゃんが亡くなって、俺が病院に行かなくなる最後の日に、その子がひまわりの一輪挿しをくれたんだ。『またね』って笑いながら」
それが、瑠唯にとっての「初恋」だった。
名前も、その後にどうなったかも知らない。ただ、その子の笑顔だけが、お姉ちゃんの記憶と一緒に、瑠唯の心にずっと残り続けていた。
「初恋、か……。え、、それって」
その時、莉緒の脳裏に、幼い頃の断片的な記憶がふっと過る。
――白い病室、たくさんの花、そして、いつもお姉さんのお見舞いに来ていた静かな男の子。
まさか、ね。
莉緒は心の中で、そのあり得ない偶然を打ち消すように首を振った。
しかし、莉緒の体の中では、二人の運命を大きく揺るがすカウントダウンが、少しずつ、確実に始まっていた。
莉緒がそっと呟くと、瑠唯は小さく頷いた。夕暮れの光が、彼の端正な横顔をオレンジ色に染めていく。
「7歳の時、病気で死んだ。俺と、ひとつしか違わなかったんだけどな。……その写真、お姉ちゃんが入院してた病院の近くにある、ひまわり畑で撮ったんだ。あいつ、ひまわりが大好きだったから」
瑠唯は自嘲気味に、ふっと息を漏らす。
「病室にいるお姉ちゃんを見てるのが、子供ながらにすごく怖かった。少しずつ動けなくなって、顔色が悪くなって……ある日突然、いなくなる。大切なやつを作ると、失った時に頭がおかしくなりそうになるんだ。だったら、最初から誰も近くに置かない方がいい。女の子に興味がないっていうか……誰かと深く関わるのが、ただ怖かったんだと思う」
ずっと胸の奥に閉じ込めていた秘密を、吐き出すように語る瑠唯。
莉緒を過剰なほどに心配したのも、彼女の顔白さが、かつての姉の姿と一瞬だけ重なって見えたからだった。
「……でも、その写真には、もう一人写り込んでただろ」
瑠唯がふっと思い出したように、少しだけ目を細めた。
「お姉ちゃんの病室の隣に、同じくらいの年の、いつも帽子を被った女の子が入院してたんだ。人見知りな俺に、いつも『るいくん!』って笑いかけてくれてさ。あいつの病室だけは、いつもお見舞いの花でいっぱいで……。お姉ちゃんが亡くなって、俺が病院に行かなくなる最後の日に、その子がひまわりの一輪挿しをくれたんだ。『またね』って笑いながら」
それが、瑠唯にとっての「初恋」だった。
名前も、その後にどうなったかも知らない。ただ、その子の笑顔だけが、お姉ちゃんの記憶と一緒に、瑠唯の心にずっと残り続けていた。
「初恋、か……。え、、それって」
その時、莉緒の脳裏に、幼い頃の断片的な記憶がふっと過る。
――白い病室、たくさんの花、そして、いつもお姉さんのお見舞いに来ていた静かな男の子。
まさか、ね。
莉緒は心の中で、そのあり得ない偶然を打ち消すように首を振った。
しかし、莉緒の体の中では、二人の運命を大きく揺るがすカウントダウンが、少しずつ、確実に始まっていた。