私立白薔薇学園の社長令嬢かつ養女
「あいつって、誰のことなの?」

 するとカンツウォーネは、
 あっさりと答えた。
井東 真(いとう まこと)のことよ」

 その名前を聞いても、
 ピンと来なかった。

「そんな人、知らない」

「この学校の新入生よ」

「新入生か」

 私は二年生なので、
 相手は後輩ということになる。
 とはいえ、部活動や委員会が同じでもなければ、
 新入生と知り合う機会はほとんどないと言ってもいいだろう。


 机の上を軽く拭き、
 椅子を整え、
 今日使う書類を棚から取り出して並べる。
 ホワイトボードに貼ってある予定表を確認し、
 前日の議事録を机の上へ置いた。
 さらにポットに新しい水を入れてスイッチを入れ、
 お茶の準備も済ませる。

 生徒会役員が来る前にやっておくのが、
 気が向いた時のの仕事だった。

「いや、一つ聞いていい?」

「何かしら?」

「君、この学校の生徒じゃないよね?」

「そうだけど?」

 まるで何も問題ないという顔で答える。

「後で不審者扱いにされても、
知らないよ。

一応、警告したから」

「大丈夫よ。
あたしを誰だと思いで?」

「その自信、どっから来るの?」

 再び机の上の書類を整理し始めた。

 すると、生徒会室の扉が開いた。

「おはよう」
 入ってきたのは、
 生徒会顧問の先生だった。

 先生は私を見ると軽く挨拶を返し、
 それからカンツウォーネへ視線を向ける。

「ところで、今朝ちょっと変わった目撃情報があってな」
「目撃情報ですか?」
「ああ。他校の制服を着た生徒が、
校舎の窓までジャンプして登っていたらしい」

 ああ、そういうことか。

「もしかして、その子と知り合いか?」

「不審者です」

 私は、即答した。

「あたしを守ってくださらないの!?」

「守る義理ないから、いいよ」

 先生は少しだけため息をつく。
「なるほど」

 先生は、カンツウォーネの腕を掴んだ。

「君、職員室来なさい。
これ、不法侵入だから」

 しかし、
 その瞬間だった。

「えいっ」
 カンツウォーネが先生の顔へ向かって手をかざす。
 ボッ、と炎が燃え上がり、
 そのまま先生の顔を包んだ。

 普通なら大騒ぎになる場面だった。
 だが、炎が消えると先生は平然と立っていた。
 髪一本焦げていない。
 どこも焼けている様子はなかった。


「先生は耐火能力を持っているからな。
そんな攻撃は意味ないぞ」

「それ、人間なの?」

「それを言ったら、火を出せる君も人間なのかという話になるぞ」

「これで駄目なら、
これならどうかしら?」

 カンツウォーネは、
 今度は勢いよく飛び上がり、
 先生の顔へ回し蹴りを放つ。

 しかし、
 先生は一歩も動かなかった。
 怪我もしていない。

「先生には暴力無効化の能力もある。
だから殴っても蹴っても意味はない」

「この男、何者!?」
 カンツウォーネが叫ぶ。

 先生は冷静なまま答えた。

「その台詞は、そのまま君にも返せるけどな」

「こうなったら、
この学校を壊すしかないわ!」
「それはよくないし、無理だぞ」

「よく分からないけど、
この建物も終わりよ!」

 カンツウォーネは勢いよく壁へ向かって蹴りを放つ。
 ところが、
 足は壁に当たることなく、
 そのままするりと壁を突き抜けてしまった。

「どうなってるの?」

「先生は透過能力も持っていてね。
必要なものを透過させることができる。
つまり、君の攻撃は建物にも通用しない」

「そんな能力まであるの!?」

「これで君のやることは全部無駄になった。
さあ、大人しく職員室へ来なさい」

 先生はカンツウォーネの腕をつかむ。
「ちょ、離して!
セクハラとして訴えるわ!」

「それなら、
君は、
不法侵入と、
生涯未遂罪、
器物破損未遂罪だ」

 カンツウォーネは抵抗するが、
 先生は全く動じない。

 そのままずるずると廊下へ引きずられていった。
 だけど、
 廊下には叫び声が聞こえ、
 それは生徒会室にもはっきり聞こえるぐらい響く。

「井東真に復讐するまで、
ここで捕まるわけにはいかないわ!」

「復讐?
君の罪は、追加されるだけだぞ。

というか、先生、その子の担任だし。

そんなことしたら、バレるぞ」
 
 やがて二人の姿が見えなくなり、
 生徒会室には静けさが戻る。

 私はその光景を見送りながら、
 小さく呟いた。

「……この先生、何気にすごいな」
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この作品はエブリスタ、アルファポリスでも投稿しています。 毎ちゃん ハーフツインシニヨンの髪型にしています。 好きな色はストロベリーピンクと苺色。 いちごクリニックの医師令嬢。

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