稲光家に溺愛される令嬢〜稲光らい様は彼女に夢中〜
 朝、陽射しがカーテンの隙間から差し込み、
 部屋の中を明るく照らした。
 
 これから、毎朝早く起きるの辛いな。
 小学校まともに通えてなくて、
 普通の日常憧れていたけど、
 いざそれをやると、
 だるい。

「……朝か」

 小さく呟いてベッドから起き上がる。

 枕元では、
 カバのぬいぐるみの姿をした妖精、
 ニーフェーアーツが気持ちよさそうに眠っていた。

「妖精は自由でいいな。
ニーフェ」

 名前が長いため、
 私は普段から「ニーフェーアーツ」とは呼ばず、
 敬称で呼んでいる。


 制服に着替え、
 身支度を整えると、
 私は三階にある自分の部屋を出た。

 階段を下りると、
 一階のリビングから香ばしい匂いが漂ってくる。

 食卓には焼き魚、
 味噌汁、
 卵焼き、
 ほうれん草のおひたし、
 ご飯が並び、
 朝食の準備はすでに整っていた。

 テレビでは朝のニュースが流れていた。
 ニュースキャスターの表情は険しい。

『続いて、
昨夜の事件です。
市内で発生している女子中学生グループによる連続通り魔事件について、
新たな情報が入りました』

 画面には、立入禁止のテープが張られた住宅街や、
 多数のパトカーが映し出される。

『警察によりますと、
犯人グループは犯行を繰り返し、
現行犯逮捕を試みた警察官や刑事が次々に襲われました。
複数名が殉職し、
現在も犯人グループは逃走中です』

 物騒な事件がなくならないな。

 ニュースでは警察が住民へ外出時の注意を呼びかけていた。

『登下校の際は、
なるべく一人で行動せず、
人通りの多い場所を利用してください』

 そんなことしても、
 根本的な解決にならない。

 巻き込まれる時は、
 誰でも、
 巻き込まれる。

 ニーフェは、
 私のスクールバックから顔を出していた。

 私立白薔薇学園にて。
 始業のチャイムが鳴ると、
 担任の先生が教室へ入ってきた。

 ホームルームが始まる。

 先生は出席を確認すると、
 すぐに表情を引き締めた。

「この地域で連続通り魔事件が発生しています。
犯人はまだ捕まっていません」

 先生は教卓の前で生徒一人ひとりを見渡した。

「登下校はできるだけ集団で行動してください。
一人で人気の少ない道を歩かないこと。
遠回りになっても、
人通りの多い道路を利用してください」

 眠い。
 私は、真剣に聞く気になれなかった。

 ニュースと同じことを、
 なぜ担任がいうのか不思議でならなかった。

 第一、
 大人は綺麗ごとしか言わない。
 それを私がわかっていて、
 小学生の頃に学んだ。
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