最下位特待生は、学園トップ4の家庭教師になりまして。
だって、九条くんも、一ノ瀬くんも、

私にとっては雲の上の人たち。

普通に話すだけで緊張するくらいだ。

「それに」

一ノ瀬くんは優しく笑った。

「朝比奈さんは、僕にちゃんと向き合ってくれました」

「……」

「だから、僕も僕なりに、心を開いてるつもりですよ」

その言葉に、胸が少しだけ温かくなる。

「それに」

一ノ瀬くんは少しだけ首を傾げた。

「敬語で話されると、少し距離があるように感じます」

「あ……」

「もちろん、無理に変える必要はありません。

僕は敬語のほうが慣れていますから。

ただ―――」

一拍置いて。

「変に気を使わず、朝比奈さんの話しやすいようにしてほしいです」

なんというか……....巧いなぁ、と思った。

そんな優しい言い方をされたら、どうにも断る気が無くなってしまう。

「……じゃあ」

小さな声で言う。

「少しずつ、頑張ってみる....ね」

「はい」

一ノ瀬くんは嬉しそうに頷いた。

「ありがとうございます」

「えっと……律、くん」

まだ慣れなくて、名前を呼ぶだけで緊張する。

でも、一ノ瀬くんは一瞬だけ目を見開いて、

それからふっと柔らかく笑った。

「はい」

その笑顔は、今日見た中で一番嬉しそうものだった。

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