不死鳥の妖精と火炎の魔女
第1話
私はここで、フェニーチェに問いかけてみる。
「ところでさ、どうしてフェニーチェは私をかばってくれなかったの?」
「どういうことだ?」
フェニーチェは、眉をひそめた。
「『愚行』なんて難しい言葉を使っている余裕があるなら、フェニーチェが戦ってくれても良かったじゃん」
「水とか氷なんて……」
「そんなもの飛んできたって、不死鳥なんだからなんとかなるでしょ?」
「『不死鳥』なんて言葉は、人間が勝手につけた呼び名なのでござる」
私は、フェニーチェの言いたいことをくみ取れなかった。
私の言う『不死鳥』は、何があっても絶対に死なない最強のイメージがあったからだ。
それなのに、水や氷を怖がる必要なんてあるのだろうか?
私はこれまでフェニーチェの行動を観察してきたけれど、
やっぱりこの世界でいう妖精のことも、
住人のことも、
私には理解しがたいことの方が多かった。
「フェニーチェ、私は君が疑わしい。初めて会った時から」
フェニーチェは動揺している様子だった。
無理もない。
ずっとそばにいた相手から「疑わしい」なんて信用されていない発言をされたら、
だれだって困惑するだろう。
だけど、私には彼を疑うだけの根拠があった。
「別にね、理不尽に疑いたいわけじゃないの。『不死鳥』っていうのは人間がつけた呼び名だと言ったけれど、そもそも本によるとね、不死鳥は自ら『不死鳥』と名乗っているの。
それに、そもそも伝説の鳥が人々の目の前に現れることなんてないし、
もし現れたとしても、
さっきの町の人たちが不死鳥を見て平然としていられるわけがないよ。
君のことを気にかけるどころか、
私の方しか眼中になかったじゃない。
いくら『火炎の魔女』がいるからって、
不死鳥が目の前にいたら何かしらの反応を示すはずなの」
フェニーチェは、何か言いたげだった。
ここは、フェニーチェが何か言うまで待った方がいいのだろうか?
冷静に考えて、
不死鳥なんて伝説の生物は身を隠した方が安全だということは、
私にだってわかっていた。
だから最初は確信が持てなくて何も言わなかったけれど、
さっきの騒動でそれが確信に変わったのだ。
あまりにも言いすぎると、
追い打ちをかけてしまいそうだった。
「私の推察によると、君は何か目的があって私に近づいた。
……合ってる? それに、私の前でだけ『不死鳥』を名乗っていて、ほかの人は君を不死鳥と認識していない」
私はフェニーチェの瞳を覗き込んだ。
ひどく動揺しているのがわかった。
そして、私ははじめて周りを見回した。
最初はあたり一面が焼け野原のようになっていた町だったけれど、
さっきの騒動のせいで、
あっちこっちに氷があったり水たまりができたりしている。
私も濡れているし、
体に氷がかかっているところもある。
だけど、私は寒くなかった。
フェニーチェは濡れていないし、氷もかかっていない。
もしかして、水と氷を怖がっているの?
さっき、それらしき発言があった。
私には寒さの耐性があるし、
水も氷も大丈夫だから、
いくら投げられても平気だった。
火炎の魔女だけど。
ここで、フェニーチェがやっと口を開いた。
「実は……我は、不死鳥と火炎の妖精のハーフなのでござる」
「ハーフ?」
不死鳥の妖精だと思っていたけれど、不死鳥と妖精は別物だったりするのかな?
「我は、完全なる不死鳥ではない。
炎が消えたらどうなるかわからないのでござる。
もし、氷や水が我に当たったら炎が消えて、
我は死んでしまうかもしれない……」
「つまり、怖かったってことだね」
「すまない。
何の役にも立てなくて……。我は、おぬしを支えたかったのでござる」
「何のために?」
「『ブレヌン』というごく平凡な女の子が突然、高い魔力を得た。
頭も良くなり、
まるで人格が変わってしまったかのようだ――そんな噂を聞きつけたのだ。
我は、年齢のわりに頭が良いブレヌンの視察を頼まれて、
それで、おぬしに近づいた」
「視察? 視察したって、私のことなんて何にもわからないし、情報は得られないよ。真実を信じてもらえるとも思ってないし」
「どういうことだ?」
「異世界転生して幼女の肉体に宿って前世の記憶を思い出しちゃうとか、どっかの世界の幼女が異世界転移して高い魔力を得ちゃうとか……異世界漫画や異世界小説の『あるある』を、君たちの世界の住人が信じられる?」
「一体、何の話をしているんだ? 早く正体を、真実を教えてくれぬか?」
「うーん、その前に君のことを先に知りたいな」
「我は、おぬしのことを先に知りたいぞ」
「強情だなあ。まずは、どこから来たのか……私は沼田市から。君はどこの出身?」
「沼田市とは?」
そのまま何も考えずに言ってしまった。
そういえば、この世界に沼田市なんて場所はなかったんだっけ。
「……遠方出身ってことで解釈して。その解釈で合ってるから」
私は頭をひねることにした。
これは、非常に言ってはいけないことを言った気がする。
「真実は、いつもひとつじゃないってことだよ。
真実なんて、無数にあるの」
言っていることがめちゃくちゃになってくる。
「フェニーチェ、私は君を警戒してるなんて言ったけれど、友達になりたいの。
うーん、この世界では『仲間』っていうのかな? 仲間になりたいとは思ってる」
「ブレヌン……」
「視察とか、終わりにできない?」
「それは……上に聞いてみないと」
「言い方は良くないけれど、それって誰の差し金なの? 君は何がしたかったの?」
「わからないでござる。
ただ『視察をしてこい』とだけ……」
「これって異世界あるあるだと、確かどっかの王国の命令とか、魔王とか、悪役令嬢あたりでしょ?」
「だから、さっきから何の話をしているでござるか!?」
「とにかく、フェニーチェに視察してこいって言った人に会わせて、ってことだよ」
「仕方ないでござる。
ついてくるでござるよ」
「よし、やっと進行イベント来た!」
「しんこういべんと……?」
「いちいち反応しなくていいから!」
私はフェニーチェについていくことにした。
焼け野原から離れる。
というか、今は氷と水の町かな?
まあいいや。
とりあえずここから離れて、
新しい世界にやっと旅立てるワクワク感の方が強かった。
「これからもよろしくね、フェニーチェ!」
「この気持ちの切り替えの早さは、なんなのでござるか……」
「ところでさ、どうしてフェニーチェは私をかばってくれなかったの?」
「どういうことだ?」
フェニーチェは、眉をひそめた。
「『愚行』なんて難しい言葉を使っている余裕があるなら、フェニーチェが戦ってくれても良かったじゃん」
「水とか氷なんて……」
「そんなもの飛んできたって、不死鳥なんだからなんとかなるでしょ?」
「『不死鳥』なんて言葉は、人間が勝手につけた呼び名なのでござる」
私は、フェニーチェの言いたいことをくみ取れなかった。
私の言う『不死鳥』は、何があっても絶対に死なない最強のイメージがあったからだ。
それなのに、水や氷を怖がる必要なんてあるのだろうか?
私はこれまでフェニーチェの行動を観察してきたけれど、
やっぱりこの世界でいう妖精のことも、
住人のことも、
私には理解しがたいことの方が多かった。
「フェニーチェ、私は君が疑わしい。初めて会った時から」
フェニーチェは動揺している様子だった。
無理もない。
ずっとそばにいた相手から「疑わしい」なんて信用されていない発言をされたら、
だれだって困惑するだろう。
だけど、私には彼を疑うだけの根拠があった。
「別にね、理不尽に疑いたいわけじゃないの。『不死鳥』っていうのは人間がつけた呼び名だと言ったけれど、そもそも本によるとね、不死鳥は自ら『不死鳥』と名乗っているの。
それに、そもそも伝説の鳥が人々の目の前に現れることなんてないし、
もし現れたとしても、
さっきの町の人たちが不死鳥を見て平然としていられるわけがないよ。
君のことを気にかけるどころか、
私の方しか眼中になかったじゃない。
いくら『火炎の魔女』がいるからって、
不死鳥が目の前にいたら何かしらの反応を示すはずなの」
フェニーチェは、何か言いたげだった。
ここは、フェニーチェが何か言うまで待った方がいいのだろうか?
冷静に考えて、
不死鳥なんて伝説の生物は身を隠した方が安全だということは、
私にだってわかっていた。
だから最初は確信が持てなくて何も言わなかったけれど、
さっきの騒動でそれが確信に変わったのだ。
あまりにも言いすぎると、
追い打ちをかけてしまいそうだった。
「私の推察によると、君は何か目的があって私に近づいた。
……合ってる? それに、私の前でだけ『不死鳥』を名乗っていて、ほかの人は君を不死鳥と認識していない」
私はフェニーチェの瞳を覗き込んだ。
ひどく動揺しているのがわかった。
そして、私ははじめて周りを見回した。
最初はあたり一面が焼け野原のようになっていた町だったけれど、
さっきの騒動のせいで、
あっちこっちに氷があったり水たまりができたりしている。
私も濡れているし、
体に氷がかかっているところもある。
だけど、私は寒くなかった。
フェニーチェは濡れていないし、氷もかかっていない。
もしかして、水と氷を怖がっているの?
さっき、それらしき発言があった。
私には寒さの耐性があるし、
水も氷も大丈夫だから、
いくら投げられても平気だった。
火炎の魔女だけど。
ここで、フェニーチェがやっと口を開いた。
「実は……我は、不死鳥と火炎の妖精のハーフなのでござる」
「ハーフ?」
不死鳥の妖精だと思っていたけれど、不死鳥と妖精は別物だったりするのかな?
「我は、完全なる不死鳥ではない。
炎が消えたらどうなるかわからないのでござる。
もし、氷や水が我に当たったら炎が消えて、
我は死んでしまうかもしれない……」
「つまり、怖かったってことだね」
「すまない。
何の役にも立てなくて……。我は、おぬしを支えたかったのでござる」
「何のために?」
「『ブレヌン』というごく平凡な女の子が突然、高い魔力を得た。
頭も良くなり、
まるで人格が変わってしまったかのようだ――そんな噂を聞きつけたのだ。
我は、年齢のわりに頭が良いブレヌンの視察を頼まれて、
それで、おぬしに近づいた」
「視察? 視察したって、私のことなんて何にもわからないし、情報は得られないよ。真実を信じてもらえるとも思ってないし」
「どういうことだ?」
「異世界転生して幼女の肉体に宿って前世の記憶を思い出しちゃうとか、どっかの世界の幼女が異世界転移して高い魔力を得ちゃうとか……異世界漫画や異世界小説の『あるある』を、君たちの世界の住人が信じられる?」
「一体、何の話をしているんだ? 早く正体を、真実を教えてくれぬか?」
「うーん、その前に君のことを先に知りたいな」
「我は、おぬしのことを先に知りたいぞ」
「強情だなあ。まずは、どこから来たのか……私は沼田市から。君はどこの出身?」
「沼田市とは?」
そのまま何も考えずに言ってしまった。
そういえば、この世界に沼田市なんて場所はなかったんだっけ。
「……遠方出身ってことで解釈して。その解釈で合ってるから」
私は頭をひねることにした。
これは、非常に言ってはいけないことを言った気がする。
「真実は、いつもひとつじゃないってことだよ。
真実なんて、無数にあるの」
言っていることがめちゃくちゃになってくる。
「フェニーチェ、私は君を警戒してるなんて言ったけれど、友達になりたいの。
うーん、この世界では『仲間』っていうのかな? 仲間になりたいとは思ってる」
「ブレヌン……」
「視察とか、終わりにできない?」
「それは……上に聞いてみないと」
「言い方は良くないけれど、それって誰の差し金なの? 君は何がしたかったの?」
「わからないでござる。
ただ『視察をしてこい』とだけ……」
「これって異世界あるあるだと、確かどっかの王国の命令とか、魔王とか、悪役令嬢あたりでしょ?」
「だから、さっきから何の話をしているでござるか!?」
「とにかく、フェニーチェに視察してこいって言った人に会わせて、ってことだよ」
「仕方ないでござる。
ついてくるでござるよ」
「よし、やっと進行イベント来た!」
「しんこういべんと……?」
「いちいち反応しなくていいから!」
私はフェニーチェについていくことにした。
焼け野原から離れる。
というか、今は氷と水の町かな?
まあいいや。
とりあえずここから離れて、
新しい世界にやっと旅立てるワクワク感の方が強かった。
「これからもよろしくね、フェニーチェ!」
「この気持ちの切り替えの早さは、なんなのでござるか……」


