転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~

「……隠すつもりはなかった。ただ、最初から王族だと名乗れば、君が俺を敬遠して、遠くへ逃げてしまう気がしたんだ」

 その言葉に、私は思わず首を傾げた。

(――え? なんで逃げるの? 王族でも冒険者でも、レオンさんはギルドの大切なお得意様なのに?)

 私の呑気な疑問など知る由もなく、レオンさんは酷く真剣な顔をしている。
 彼は、この国のどんな貴族よりも高貴な、雲の上の人。
 対して、私は。ハズレスキルを引いたというだけで、実家である伯爵家から『一族の恥』と罵られ、勘当同然に辺境へ追い出された身。
 私のような「無能」とされた女が、彼のような輝かしい太陽の隣にいるのは確かに不釣り合いだ。

「団長! 国境付近の異常事態の調査任務は理解しておりますが、これほど長く音信を絶たれては国王陛下も案じられます! さあ、そのふざけたエプロンを脱いで、すぐに帰還の準備を――」

「おいおい、ちょっと待ちな、お高貴な騎士様方」

 シオンが歩み寄ろうとした瞬間、ガルドさんが大剣を肩に担ぎながら前に出た。

「ここは俺たちのギルドだ。いくら隣国の騎士団様だろうが、扉をぶっ壊して押し入り、うちの可愛い受付嬢を怯えさせるような真似は感心しねえな」

 ガルドさんの言葉に同調するように、ブロンさんや他の冒険者たちも武器に手をかけ、騎士団を睨みつける。
 一触即発の空気。
 しかし、それを制したのは、他でもないレオンさんだった。

「ガルド、手出しは無用だ。……これは、俺の問題だ」

 レオンさんが静かに立ち上がると、彼の周囲に、物理的な衝撃を伴うほどの冷たい魔力が吹き荒れた。
 ギルドの空気が一瞬で氷点下に達したかのように錯覚する。

「帰還は断る。俺の任務はまだ終わっていない。いや……俺の真の任務は、ここから始まるのだ。この街には、俺が何に代えても守らねばならない『至宝』がある」

 レオンさんは低く響く声で言い放つと、私の肩を力強く、けれど壊れ物を扱うような極上の繊細さで抱き寄せた。
 騎士団全員を射抜くような鋭い視線が、彼らをその場に縫い付ける。

「し、至宝……? 団長、まさかその小娘――」

「ユフィだ。言葉に気をつけろ、シオン。彼女こそが、俺がこの地に留まる唯一の理由だ」

 レオンさんの腕に力がこもる。

「……俺を連れ戻したいというのなら、剣で語れ。この俺から彼女を引き剥がせる者が、お前たちの中にいればの話だがな」
< 22 / 27 >

この作品をシェア

pagetop