転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~

 完全に殺意すら混じったその宣言に、白銀の騎士団たちが、その圧倒的な威圧感に一歩、また一歩と恐怖で後退りする。
 自国の騎士団長が、たった一人の少女のために国を敵に回しかねない覇気を放っているのだ。

 ギルド中が「あの受付嬢、マジで隣国の王子の本命か!?」という驚きと困惑で騒然とする中、私は彼の熱い腕の中で、一人だけ明後日の方向の結論に行き着いていた。

(――なるほど! そういうことか!)

「レオンさん……ダメですよ……そういうの」

「ユフィ」

 私の言葉を遮るように、彼が甘く、ひどく優しい声で私の名を呼んだ。
 さっきまで騎士団に向けていた冷酷な態度が嘘のような、とろけるような声音だ。

「君の価値を決めるのは、君の力を理解できずに捨てた愚か者共ではない。この俺だ」

 彼は私の耳元でそう囁くと、あやすように私の髪を指先で梳き、その場にいる全員に見せつけるように、私の額にそっと唇を落とした。
 チュッ、という小さな音が響き、ギルドの空気が完全に固まった。

(――な、なんて迫真の演技……っ!)

 私は内心で盛大な拍手を送っていた。
 要するにレオンさんは、国に帰りたくないのだ。
 この辺境の街でのスローライフが気に入りすぎて、なんとか帰還を引き延ばそうとしているのに違いない。
 そのための口実として、「この受付嬢に執着しているから帰れない」という設定をアドリブででっち上げたのだ。

(王子様ともなると、嘘をつくためのパフォーマンスも本気すぎるわね……!)

 謎の冒険者、レオン。
 その正体は、あまりに重く、あまりに眩しすぎた――のだが。

 当の私は「王子様の現実逃避に巻き込まれた」と見当違いの勘違いをしたまま、言わば『実家を家出してきた同志』のような謎の親しみすら湧いてしまい、見事な大根役者っぷりでただフリーズするしかなかったのである。
< 23 / 32 >

この作品をシェア

pagetop