転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
「もう、それなら一緒に行きませんか? あっちに美味しいクレープの屋台があるんです」
「……! いいのか!?」
パァァッ! と、レオンさんの背景に目に見えるような幻の薔薇が咲き乱れた。
レオンさんは私の歩幅に合わせてゆっくりと歩き、人混みで私がぶつからないよう、さりげなく肩を抱くように守ってくれている。
その優しさが少しだけこそばゆくて、嬉しい。
洋服屋のウィンドウの前で足を止めた、その時だった。
「姉上!!」
突然、背後からドラマチックな叫び声が辺りに響いた。
振り返ると、眩しいほどの金髪を揺らし、炎のような赤い瞳を感動に潤ませた――カイルが、息を切らして立っていた。
「カイル!? どうしてここに!?」
「聞きましたよ、姉上! 数万のマンドラゴラを同時に空中で静止させたとか! やはり姉上のスキルはゴミなんかじゃなかった。父上は見る目がなかったんです!!」
カイルはズンズンと歩み寄り、私の両手をがっしりと握りしめた。
「姉上、さあ、僕と一緒に帰りましょう! 姉上の素晴らしい力があれば、エーデルガルト家はさらに安泰です! 僕が全力で姉上をお守りし、最高の環境をご用意しますから!」
「えっ、ちょ、ちょっと待ってカイル。数万じゃなくて百八体だったし」
迫り来るカイルの手が、バシィッ! と弾き飛ばされた。
見れば、レオンさんが私の前に立ち塞がり、カイルを見下ろして地獄の底のような冷気を放っている。
「……気安く触れるな。俺の至宝に」
「あなたはあの時の冒険者……いや、ただの冒険者ではないですね。その身のこなし、そしてこの魔力……」
カイルも負けじと、優秀な魔法剣士としての闘気を立ち上らせる。
大通りの真ん中で、金髪の美青年と銀髪の超絶美形騎士が、バチバチと激しい火花を散らして睨み合っている。
周囲の通行人たちが「なんだなんだ、美形同士の痴話喧嘩か!?」と遠巻きにヒソヒソと騒ぎ始めた。
「姉上は僕の家族です! 一緒に帰りたいというのは、僕の当然の権利だ」
「彼女はもう、その息の詰まる鳥籠には戻らないと言ったはずだ。ユフィの意思を尊重できないのなら、たとえ義弟であろうと容赦はしない」
レオンさんの手が、腰の剣の柄に掛かる。
「ストーーーップ!!!」
私は慌てて二人の間に割って入った。
このままじゃ街の中心で大乱闘が始まってしまう!
「カイル、わざわざ来てくれてありがとう。でも、私、家には戻らないわ。ここでの生活が気に入っているの。今日だって、こうしてお休みを満喫してるんだから」
「姉上……でも……!」
カイルは食い下がろうとしたが、私がキッと睨むと、しゅんと項垂れる。
「……わかりました。姉上がそうおっしゃるなら、今日は引き下がります。ですが、諦めたわけではありませんからね。姉上の素晴らしさを一番理解しているのは、家族である僕なんですから!」
カイルは負け惜しみのようにそう叫ぶと、チラリとレオンさんを睨みつけ、足早に去っていった。
「ふう……嵐みたいだった……」
私は大きくため息をついた。
てか、あの子学校どうしてるんだろう。
姉としては少し心配。