転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~

「ユフィ。やはり家族の元に帰りたいか」

 ふと見上げると、レオンさんがひどく拗ねたような、それでいて不安げな翡翠色の瞳で私を見下ろしていた。

「え? いや、カイルは昔からちょっと大げさなところがある可愛い弟ですし……」

「君の力も、その笑顔も……俺にとって唯一無二の至宝だ。あの男なんかに、絶対に渡す気はない」

 真顔で。
 しかも、往来のど真ん中で。
 サラリととんでもない発言。

(……あ、なるほど!)

 私はポンと手を打った。
 この数日で、私の【待機】や【接続】が戦闘において規格外のサポート能力を発揮することは実証済みだ。
 前世で読んだライトノベルにもよく書いてあったあれだ。

『高ランクの冒険者ほど、有能な支援職やアイテム係を独占して囲い込みたがる』と。

 つまりレオンさんは、私という超絶便利なサポーターをカイルに引き抜かれるのが嫌で、必死に引き止めてくれているのだ。
 仮初の姿とはいえ、なんて仕事熱心な冒険者なんだろう。

「わかってますよ、レオンさん!」

「ユフィ……! ならば、俺の想いを……」

 パァァッ、とレオンさんの顔に希望の光が差した。

「はい! 私のスキル、回復薬の保留とか色々できて便利ですもんね。これからもレオンさんの『優秀なサポート役』として、依頼があった時には付き合いますから安心して雇ってください!」

 私が自信満々にドンッと胸を叩くと。

「……サポ、ート役……?」

 レオンさんはポカンと口を開け、その後、全ての生気を失ったようにガクリと膝から崩れ落ちた。

「レ、レオンさん!? どうしたんですか急に! もしかしてマンドラゴラの呪い!?」

「いや……俺の熱烈な想いが、君の斜め上の解釈によって完全に【待機(スタンバイ)】させられただけだ……。そうか……専属サポーター……俺は、有能なSクラス冒険者……」

 ブツブツと呪文のように呟きながら、レオンさんはなぜか遠い目をしている。

「よくわかりませんが、ほら、あそこの屋台のクレープ美味しいらしいですよ。並びましょう!」

「……ああ。君が傍にいてくれるなら、今はその名目でもいい……」

 どこか哀愁を漂わせる最強の騎士さんの大きな背中を押しなら、私は甘いクレープの屋台へと向かうのだった。

 遠くの屋根の上から、密かに護衛任務についていたシオンさんが「殿下……不憫すぎる……っ!」と男泣きしていることには、まだ誰も気づいていなかった。
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