転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~

 その夜、清潔な小部屋で私は改めて自分のスキルを確認してみた。 
 まずは【待機(スタンバイ)】を掃除用の箒に向けて発動させる。 
 ――刹那、箒が重力を無視してピタッと空中で静止した!

「やっぱり……物体の動きや状態を一時停止できるのね」 

 次に【接続(コネクト)
 試しに机と椅子を繋いでみると、まるで最初から一つの家具だったかのように、椅子が机に吸い付いて離れなくなった。

「物と物を繋げるスキル……」 

 地味。あまりにも地味。 

 けれど、私は不思議と絶望していなかった。
 前世のゲーム知識が囁いている――一見ハズレに見えるスキルほど、使い道次第で化ける、と。 

 私は部屋の隅にあったリンゴを手に取り、思いついた実験を始めた。 
 リンゴを空中に投げ上げ【待機】を発動。 
 ぴたりと制止。
 横からつついても動かない。
 
 そのままお風呂に入りに行ってみた。 
 一時間後部屋に戻ると、リンゴは健気に空中で制止したまま。
 ――【解除】 
 置いてけぼりだったリンゴが落下を再開し、私の手のひらに収まった。

「完全にポーズ機能と一緒じゃん。それに、一時間も繋ぎっぱなしだったのに、全然疲れない。ハズレスキルだから魔力消費もエコなのかな? 時間制限、もしかして無い?」 

 心臓が高鳴る。 

 もしこれをお肉や野菜に使えたら?
 ……鮮度を保ったまま、一生腐らないってこと!?
 お茶を淹れた状態で【待機】しておけば、いつでも熱々の紅茶が飲めるし、雨が降ってきたら洗濯物を【待機】で空中に止めておけば濡れないかも!

 前世のズボラ……もとい、効率厨の血が騒ぐ。

「そして【接続】は……」 

 私は机と椅子の接続を解除し、今度は壊れかけていた本棚の板を手に取った。
 接続を発動すると、ヒビが入っていた板が、まるで溶接されたかのように一体化した。

「修理に使える……ということは、武器の応急修復、建物の補強あたりかな……まあ地味ね。研究の余地ありかな」 

 窓の外には、王都よりもずっと近くに輝く星空。 
 階下からは冒険者たちの、少し音外れだけれど楽しげな歌声が響いてくる。 

 銀貨三枚と、謎のスキル二つ。 
 でも、私には前世の知識がある。

 この二つのスキルを組み合わせれば――きっと、誰も見たことのないような使い方ができるはず。

「ゴミスキルが、どこまで化けるか」 

 私は拳を握りしめた。 
 思っていたよりもずっと賑やかで、劇的な幕開けになりそうだった。
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