転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~
「……ユフィ?」
私が慌ててレオンさんの腕を掴むと、あの冷酷な死神のようなオーラが一瞬で霧散し、いつもの大型犬のような顔に戻った。
ギャップが凄すぎる。
「その人、殺しちゃダメです。生け捕りにして国に突き出さないと、報酬が減っちゃうかもしれません」
「――君がそういうのなら」
レオンさんはあっさりと剣を収め、シオンさんたちに「縛り上げろ」と命じた。
「一件落着なのでしょうか?」
魔方陣の光が消えた遺跡で、私はホッと息をついた。
すると、レオンさんがどこか不安げな瞳で私を見つめてきた。
「ユフィ。すまなかったな」
「え?」
「俺は、こんな顔だ。権力に固執する愚かな女と同じ顔で……今まで、王宮の誰もが俺を恐れ、あるいは利用しようとしてきた。こんな呪われた血を引く俺が、君の傍にいる資格など――」
「何言ってるんですか。レオンさんはレオンさんですよ」
私は彼の手を両手でギュッと握りしめた。
「お母様に似てるかもしれないけど、レオンさんは権力なんて興味ないじゃないですか。それに……私、レオンさんの顔、すごく綺麗で好きですよ? 私を守ってくれるこの手も、すごく温かいですし」
偽りない本心を伝えると、レオンさんの翡翠色の瞳が見開かれた。
そして、彼の目から、ポロリと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「レ、レオンさん!? 泣かないで!」
「……ああ、すまない。俺は……本当に、君に出会うために生まれてきたんだな……」
私を壊れ物のように優しく抱きしめるレオンさん。
耳元で囁かれた、熱を帯びた甘い声。
背中に回された腕は、私がどこかへ消えてしまわないようにと、震えるほど強く、けれど絶対に痛くないようにと優しく――。
(あれ……?)
ドクン、と。
私の心臓が、シロとの繋がりとは全く違う理由で、大きく跳ねた。
(君に出会うため? 王位より私を選ぶ?)
今までのレオンさんの言動が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。
『有象無象の虫除けに』
『俺の命』
(これって……もしかして、優秀なサポーター枠への執着じゃ、ない?)
胸元では古竜のシロが「きゅるん」と鳴いている。
しかし、私の耳には自分の激しい心音しか聞こえなくなっていた。
レオンさんの大きな体温と、抱擁の熱。
(この人もしかして……私のこと、本気で一人の女性として好きなの!?)
私にとって彼は、呪われた王族でも冷酷な死神でもなく。
そして、ただの『仕事熱心な高ランク冒険者』でもなかったのだ。
(ど、どうしよう!?)
限界突破の激重な愛を向けられていることに今更気づいてしまった私は、彼に抱きしめられたまま、一人で盛大にパニックに陥り――。