転生令嬢は謎の騎士に溺愛されています!?~地味スキルと言われましたが【待機】と【接続】で料理も魔法も思いのまま? 辺境で幸せになります!~

「こりゃあ……数百年に一人の逸材が来たもんだねえ!」

 数週間の修行を終えた、最終日。
 すっかり頼もしくなった私に、ミルさんが満足げに頷いた。

「見事だ。お前さんのスキルは規格外だが、それを使いこなす機転と根性は本物だよ。これで卒業だ」

「ミルさん、リーゼルさん、ココちゃん……! ありがとうございます!」

 卒業のお祝い品として、ココちゃんからは、動きやすさと可愛さを兼ね備えた内ポケットがこれでもかという位ついている『魔女見習いローブ』
 リーゼルさんからは、『睡眠の煙玉』や『麻痺の毒粉』などのいかがわしいアイテムを大量に。

「ひっひっひ。そして最後に、アタシからはこれをやろう」

 ミルさんが取り出したのは、怪しくピンク色に光る小瓶だった。

「これはね、魔女の秘薬『惚れ薬』さ。これさえ飲ませれば、どんな高貴な男だろうと、王族だろうと、たちまちお前さんにメロメロになって跪くって寸法だよ」

「っ……!」

 王族でも、ひざまずく。
 その言葉を聞いて、私はピンク色の小瓶をじっと見つめた。

(……そんな薬、必要ないよね……)

 だって、彼はもう、私の指先に口づけをして跪いてくれた。
 王位なんて興味がない、ユフィの隣にいたいと、真っ直ぐな瞳で言ってくれたのだ。

 ドクン、と。
 胸の奥で、甘くて熱いものが溢れ出す。

(ああ私、レオンさんに会いたいんだ)

 彼が淹れてくれるお茶が飲みたい。
 不器用に私を褒めてくれる、あの低い声が聞きたい。
 あの大きくて温かい手に、私から触れたい。

(好き。私、レオンさんのことが大好きなんだわ)

 ピンク色の惚れ薬を見つめながら、私はついに、自分のどうしようもない恋心を完全に自覚してしまった。
 顔がカァァッと熱くなる。
 シロが「あるじよ、顔が茹でダコみたいだぞ」とツッコミを入れてくるが、気にならない。

「ミルさん、ありがとうございます。でも私、この薬は使いません」

「おや、なんでだい?」

「自分の足で、会いに行きたい人がいるんです」

 私は惚れ薬をそっとテーブルに置き、ローブのポケットをパンッと叩いた。

 魔女のアイテムと、私のスキル。
 これなら、一人でもプロの冒険者として戦えるかもしれない。

「私、王都に行きます!」

 力強く宣言した私に、魔女たちはパチパチと拍手喝采を送ってくれた。

 ――しかし。
 数分後。すっかり冷静になった私は、重大な事実に気づいて頭を抱えていた。

(待って。王都って……アルヴェリアの王都だよね? 私、ただの隣国の冒険者なんですけど……どうやって国境を越えて、VIPの集まるお城に行けばいいの!?)

 物理的な距離と、圧倒的な身分差の壁。
 遅すぎる初恋を自覚した私に立ちはだかったのは、あまりにも巨大な『現実』だった。
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