ひまわりが咲く場所で(続)描きちゅう
再開の秒針
病院の昼休憩の時屋上で
フェンスに寄りかかり、莉緒にあげた時より格段に上手くなっているお弁当を食べていると、背後で重い鉄の扉が「ギィ……」と音を立てて開いた。
「やっぱり、ここにいた」
振り返ると、大きなサイズのナース服を着た梨衣が、寒そうに両腕を抱えながら立っていた。手には、温かい缶コーヒーが二つ握られている。
「……何の用だ。新人はもう上がる時間だろ」
「相葉先生にお礼が言いたくて。あの……数年前、路地裏で助けてもらった時のお礼、ちゃんとできていなかったので」
梨衣はトコトコと歩み寄り、瑠唯の隣のフェンスに並んだ。そして、差し出された缶コーヒー。瑠唯が無言でそれを受け取ると、梨衣は嬉しそうに目を細めた。
「私、あの時からずっと、あの時のお兄さん――相葉先生に憧れて、この病院を目指したんです」
「俺に?」
「はい。あの時、私すごく怖くて、無理に笑うことしかできなくて……。でも、先生が『無理して笑うな』って言ってくれた時、心がすっごく軽くなったんです。だから、今度は私が、患者さんの『仮面』を外してあげられるような看護師になりたくて」
梨衣は夜空を見上げながら、真っ直ぐな瞳で語った。
その言葉を聞いた瞬間、瑠唯の胸の奥で、カチリと何かが噛み合う音がした。
(お前は記憶がなくても……やっぱりお前なんだな、莉緒)
かつて莉緒に貰った救いが、巡り巡って梨衣の未来を動かし、再び自分のもとへと導いた。その運命の悪戯に、瑠唯は生まれて初めて感謝したい気持ちになった。
「……だったら、その下手くそな笑顔をなんとかしろ」
瑠唯はわざと意地悪く笑い、梨衣の頭をくしゃりと撫でた。
「ええっ!? 下手くそですか!?」
「ああ。お前が心から笑えるようになるまで、俺がいくらでも指導してやるよ。覚悟しとけ、新人」
「もうっ! 相葉先生、意外とスパルタなんですね!」
怒ったように頬を膨らませる梨衣。その表情は、かつて病室で瑠唯に怒っていた莉緒そのものだった。
夜風に揺れる二人の影。
切なくも愛おしい、彼らの新しい季節が、本格的に幕を開けようとしていた。
フェンスに寄りかかり、莉緒にあげた時より格段に上手くなっているお弁当を食べていると、背後で重い鉄の扉が「ギィ……」と音を立てて開いた。
「やっぱり、ここにいた」
振り返ると、大きなサイズのナース服を着た梨衣が、寒そうに両腕を抱えながら立っていた。手には、温かい缶コーヒーが二つ握られている。
「……何の用だ。新人はもう上がる時間だろ」
「相葉先生にお礼が言いたくて。あの……数年前、路地裏で助けてもらった時のお礼、ちゃんとできていなかったので」
梨衣はトコトコと歩み寄り、瑠唯の隣のフェンスに並んだ。そして、差し出された缶コーヒー。瑠唯が無言でそれを受け取ると、梨衣は嬉しそうに目を細めた。
「私、あの時からずっと、あの時のお兄さん――相葉先生に憧れて、この病院を目指したんです」
「俺に?」
「はい。あの時、私すごく怖くて、無理に笑うことしかできなくて……。でも、先生が『無理して笑うな』って言ってくれた時、心がすっごく軽くなったんです。だから、今度は私が、患者さんの『仮面』を外してあげられるような看護師になりたくて」
梨衣は夜空を見上げながら、真っ直ぐな瞳で語った。
その言葉を聞いた瞬間、瑠唯の胸の奥で、カチリと何かが噛み合う音がした。
(お前は記憶がなくても……やっぱりお前なんだな、莉緒)
かつて莉緒に貰った救いが、巡り巡って梨衣の未来を動かし、再び自分のもとへと導いた。その運命の悪戯に、瑠唯は生まれて初めて感謝したい気持ちになった。
「……だったら、その下手くそな笑顔をなんとかしろ」
瑠唯はわざと意地悪く笑い、梨衣の頭をくしゃりと撫でた。
「ええっ!? 下手くそですか!?」
「ああ。お前が心から笑えるようになるまで、俺がいくらでも指導してやるよ。覚悟しとけ、新人」
「もうっ! 相葉先生、意外とスパルタなんですね!」
怒ったように頬を膨らませる梨衣。その表情は、かつて病室で瑠唯に怒っていた莉緒そのものだった。
夜風に揺れる二人の影。
切なくも愛おしい、彼らの新しい季節が、本格的に幕を開けようとしていた。
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