花に溺れ、香りに溶ける



 碧斗さまの母――百合乃さまに対して、私はまだきちんと自分を知ってもらえていない。
 挨拶を交わしたのは数えるほどで、いつも当たり障りのない会話しかしたことがなかった。だからとても緊張する……大丈夫だろうか。

 その夜、不安になった私は碧斗さまに電話をかけることにした。


「今日招待状、届きました。行っても大丈夫ですか?」

『もちろん。……というか、美寿に来てもらわないと困るんだ』

「困る?」

『母が、美寿のことをちゃんと見たいって言い出したから。今回の茶会、実質的な顔合わせの意味合いが強いんだ』


 碧斗さまの声が、心なしか緊張しているように聞こえた。


「碧斗さまも、緊張してるのですか?」


 そう問うと『うん』と言った。だけど、その後につぶやいた言葉に思考が停止してしまった。


『……美寿が、母にどう思われるか。それだけが心配だ』


 その後、小さく聞こえてしまった一言に、私は胸の奥がきゅっと締め付けられるのを感じた。
 今の私じゃダメだと言われたみたいで落ち込んでしまった。








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