花に溺れ、香りに溶ける



  ***



 月森家の茶会当日。
 都内の由緒ある庭園を借りきって行われたそのパーティーは、想像していた以上に大規模なものだった。着物姿の招待客たちが、庭に設えられた茶席や華展の会場を行き来している。

 政財界の重鎮らしき姿もちらほら見え、テレビや雑誌で見たことのある顔も少なくなかった。

 私は母が誂えてくれた緑がかったグレーの地に梅や椿、菊、萩などが描かれた訪問着に金色の花菱亀甲が刺繍された帯をつけた。髪はアップスタイルにして本べっこうでできた藤文様の描かれた簪をさした。これはお父さまが昨年に中許の合格祝いでくださったもので、これは代々佐山家の本家の女が佐山の者として認められた時に身に付けられるもので私にとっては一番の宝物だ。

 それに触れて気合いをいれる。共に会場に入った父は、挨拶回りをしに行ってしまった。だから今は壁の花になっている。


「美寿さん!」


 そんな中、自分の名前を呼ぶ声と人混みの向こうから、軽やかな声で駆け寄ってきたのは千夏さんだった。今日は華やかな振袖姿で、以前会った時よりも華やいで見える。

 サーモンピンクを基調とした優しい色合いの振袖に、裾には鮮やかなオレンジのグラデーション。季節の花々が美しくあしらわれていて温かみのある色調が、上品さと可憐さを同時に演出している。帯にはゴールドを基調とした花柄が華やかさがあってとても似合っている。

 私ならこんな色、着こなせない……私はお父様に似たのか背が高いから。



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