花に溺れ、香りに溶ける
華展の会場に足を踏み入れると、そこには碧斗さまが仕上げた大作の生け花が展示されていた。
枝ぶりの雄大な松と、可憐な白椿を組み合わせた作品。力強さと繊細さが同居する、まさに彼らしい一作だった。
「――どう?」
いつの間にか隣に立っていた碧斗さまが、静かに尋ねてきた。会場の照明の下、彼の横顔はいつも以上に整って見えて、思わず息を呑む。
「すごく綺麗です。碧斗さまらしい、力強さと優しさが両方ある」
「美寿にそう言ってもらえるのが、一番嬉しい」
少し離れたところから、千夏さんがひょいと顔を覗かせた。
「碧斗くんの今年の作品、去年よりずっと良くなったよね。去年は力強さが前面に出過ぎて、少し硬い印象だったけど、今年は余白の使い方が上手くなった」
「千夏に褒められると、なんか調子狂うな」
「褒めてるんだから、素直に受け取りなよ」
千夏さんは笑いながら、私の方に向き直った。