花に溺れ、香りに溶ける



 その一言に、心臓がどきりと跳ねた。

 ――碧斗の気持ちだけで、この縁談が決まったわけではない。

 それは、どういう意味なのだろう。碧斗さまが自分の意志で私を望んだという話と、矛盾しているように聞こえる。


「あの、それは――」


 尋ねようとした瞬間、百合乃さまは、まるで話を打ち切るように、優雅に一礼して踵を返した。


「今日はゆっくり楽しんでいってちょうだい。碧斗の華展、こちらの奥よ」


 残された私は、しばらくその場から動けなかった。

 千夏さんが、隣でそっと囁く。


「百合乃さま、今日はいつも以上に張り詰めた感じだね。……何か、思うところがあるのかも」

「思うところ?」

「分からない。でも、ああいう探るような聞き方をする人じゃないんだけどな、普段は」


 千夏さんの言葉が、また私の胸に小さな棘となって残った。




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