愛しいひと――く ち な し身代わりの恋(番外編)

 ドキッとした。

 一瞬、思い出してしまったのは。

 ――蓮の亡骸――

「……スゥ」


 楓の寝息が聞こえて、ホッとした。

「どうしたの? さっき、一瞬、固まってたわよ」

 そんな俺の小さな異変に気付いた梓が、寄り添ってきた。

「……いや。何でもない」

 やっぱり。
 俺一人だけ、幸せになろうなんて、許されないのだろうか?

 アユミ。
 蓮。

 消えてしまった一つの、血の一族。
 その命の灯火は、俺が一人でいることで存続できるのかもしれない。


「あっちの部屋に行かない?」

 梓が、子供部屋から居間へと俺を誘う。

「お酒、ある?」

 飲んで、忘れたい。

「あるわよ、何でも」


 忘れて、梓と心以外も繋がりたい。
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