愛しいひと――く ち な し身代わりの恋(番外編)
 梓は、昔の俺の話を聞きたがった。

 特にアユミと出会った頃の――

「自分ではよくわからないけど。クールだとか、優しいようで冷たいって」

 女に言われていた。

「あぁ」

 梓が妙に納得した様子で笑う。

「私も思ってた、特に手が」

 言いながら俺の手を触ってきた。

「手?」

「低体温とかってわけじゃなさそうなのにね」

 イタズラに笑う梓の顔は、昔と何一つ変わらない。

「また、確かめてみてよ」

 俺はグラスを置いて、梓を抱き締めた。

「手以外は熱い人なのよね、ここも」

 梓は、俺の腕の中で、俺の心臓部分に顔を埋める。

 懐かしい匂いと柔らかさだった。

 そのまま、ソファーへ梓を倒して覆い被さる。

 キスも忘れて、夢中になって梓の着ていたニットを万歳させて脱がせた。

出産したにもかかわらず、変わらない体型。

 白く滑らかな美しい肌に唇を落とす。


 外では、魔物のように泣く嵐の音が地響いていた。
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