死神の旦那様は、花嫁菓子しか食べられない
その夜。朔夜は執事・鷹宮の部屋を訪れた。
「朔夜様、いかがなさいましたか」
一日の疲れを癒すようにクラシックを流していた鷹宮は、当主の姿に慌てて蓄音機の針へ手を伸ばす。
しかし朔夜は「すぐに終わる」と静かに制した。そして低い声で告げる。
「早急に金を集めてほしい」
「金庫のものを用意いたしましょうか」
「いや。──特別な貨幣だ」
鷹宮の眉がぴくりと動く。
「……どれほど、ご入用で?」
「鈴白家が目を回す程度には」
淡々と告げられた言葉に、鷹宮は息を飲んだ。しかし次の瞬間には、事情を察したように小さく目を細める。
「……承知いたしました。難しいことはございません。最近は旧弊を手放すものが増えているとか」
朔夜は短く頷くと踵を返した。
廊下を歩く背中には、静かな怒りが滲んでいる。
小春を泣かせた代償は必ず払わせる。