冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
(いや、落ち着け。今から会う相手との話がうまくいきさえすれば、あいつの父親が新宮傘下の会社にいようがいまいが関係がなくなる。全部うまくいくはずだ)
――脳裏に黒猫ミオを抱きしめる美桜の姿が浮かんでくる。
美桜は優しい。
だけど、自分とは違って、どうも誰に対しても優しいようだ。
(俺だけじゃない。おそらくあいつは順一にだって優しかったはずだ)
自分以外の誰かのことだって――彼女が理解している可能性なんて忘れてしまっていた。
ざわざわと嫌な予感が全身を這いずってくる。
ダメだ。
これ以上は考えてはいけない。
『はい、もしもその猫が私のことを好きだって言ってくれたら、私もきっと好きになると思います』
――婚約者を捨ててまで自分のことを愛する男が、彼女のことを好きだと主張したんだとしたら……?
恋愛は勝ち負けじゃない。
男女二人の関係性だ。
そんなことは分かっている。
だけど……。
――順一の方が美桜のことをずっと前から知っていて、過ごした歳月だって長くて……それに彼女のことをずっとずっと好きだったのだ。
このままだと、自分は……。
「……負ける」
そこまで口にして、恭司はハッとする。
逸る気持ちを落ち着けるべく深呼吸をした。
背もたれに身体を預け直して、再び外を見やる。
『……? はい、ありがとうございます、恭司さん。二十四日、楽しみにしています』
――大丈夫。
大丈夫だ。
あとたった数日で全ての決着がつくのだ。
恭司は窓の外を見ながら自分に言い聞かせた。
「大丈夫だ。あいつは俺を裏切るような女じゃない。それに……」
もしかしたら……。
「幸せな家庭が何か、俺が一番分かっちゃいないんだがな」
だけど、美桜となら……。
恭司は美桜と一緒に暮らす未来を想像してひと眠りすることにしたのだった。