冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
現在。
恭司は会社を出てしばらく歩いていた。
美桜との電話を終えると、スマホの画面をタップして電話の接続を切った。
暗くなり始めた空を眺める。
「あいつ、年末年始は実家に帰るんだな。帰らないなら、一緒に過ごしてやるつもりだったのに」
少しだけ胸に寂しさが去来する。
帰る実家のない自分とは違って、彼女には帰る場所がある。
――帰れる家があるなら帰った方が良い。
そんな風に彼女に伝えたのは自分自身だった。
とはいえ、ずっとそう考えていたわけじゃない。
これまでの自分だったら……。
――家族だろうと嫌なら会う必要なんてない。
そう伝えていたに違いない。
けれども、恭司の中で美桜と出会って確実に変化があった。
そう。
美桜との今後を考えるに当たって、ここ数日だけれども漠然と自分の半生を振り返っていたのだ。
(新宮家のことは心底嫌いだったが……)
美桜と黒猫ミオと一緒に過ごす中で思い出したことがあった。
忙しくて家にほとんどいない父だったが、帰ってきた時は義母の目のない場所で可愛がってくれようとしていたことを思い出した。
『恭司、お前は俺と違って自由に生きや』
当時の自分は心を閉ざしてしまっていたから、自分が親戚一同から嫌がらせを受けているのに、彼らを黙らせることもできない弱い人間のくせにと父親のことを心の中でなじっていたけれど……。
『もうこの家には戻ってくんな』
今にして思えばだが、新宮家を出て海外に向かうことだって背中を押してくれたと捉えることもできる。
――恭司が自由であるようにと、いつも願ってくれていたからこその、父親なりの不器用な発言だったのかもしれない。
(あいつと出会ったからだな)
美桜と出会って、自分なりに幸せな家庭像を考えるようになったからこそ、考えが変わったのだ。
父のことを思い出せたし、父への考え方を変えることができた。
だからこそ、一部のどうしようもない親を除いて、関係性を修復できる見込みがある親ならば、できれば修復した方が良い。
恭司自体があまり家族に恵まれなかったからこそ、そう強く思うようになったのだ。
「あいつの平和思想が移ってるのかもな。皆で仲良く暮らそうみたいなお気楽思考。たくさんの子たちに囲まれて幸せだ、みたいなやつ」
恭司の口元がふっと綻んだ。
一昔前の自分だったら、「馬鹿らしい」「くだらない」と一蹴していたかもしれないのに。
美桜と自分によく似た子どもたちと黒猫ミオの子どもたちに囲まれて過ごす想像が頭にふっと湧いてきた。
「まあ、こういう変化も悪くないかもな」
恭司は――最近の自分自身の変化が嫌いではなかった。