冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
本能的に恭司は写真を拒絶した。
ザワリ。
胸が騒めいて落ち着かない。
焦りはだいぶ落ちついたはずだったのに、またもざわざわと全身に嫌な感覚が這いずってくる。
湧き上がる焦燥を落ち着けるように、恭司は吐き捨てるように告げた。
「おおかた順一が勝手にあいつのことを好きだったんだろう?」
すると、難波が口を尖らせながら話しかけてくる。
「なんだよ、恭司、お前、梅田美桜ちゃんと別に知り合いでもなんでもないくせに。順一みたいに良いやつが近くにいたら、俺が女性だったら惚れちまうけどな」
何も知らないから仕方がないのは分かっているが――難波の言葉が恭司の胸を抉って来た。
脳裏に美桜の言葉が蘇る。
『はい、もしもその猫が私のことを好きだって言ってくれたら、私もきっと好きになると思います』
あんなに顔に出やすい順一がそばにいて、いくら美桜が鈍いといっても、彼の好意に気づかかなかったはずがない。
『私のせいで新宮部長の婚約者さんが……噂を信じて……誰かを不幸にするつもりはなかったのに……だから、会社を辞めたのに……私は幸せになったらダメなんです。恭司さんに優しい言葉をかけてもらえるような人間じゃないんです。ごめんなさい、私のせいで、ごめんなさい』
(あいつは……)
自分が不幸になるよりも、他人が不幸になるのを嫌がる女性で……。
だとしたら、美桜は本当は……。
「お、話をすればあの子だ! しかも順一と一緒じゃないか!」
ビクリ。
恭司の身体が跳ね上がる。
難波が話した通り、自分たちの前方――公園の入り口付近に――美桜と順一が立っていた。
「あいつ、また……」
順一が無理やり美桜に迫っているに違いない。
そう思って、その場を駆けようとしたのだけれど……。
一瞬だけ順一がこちらを振り向いた。そうして、美桜に何か話しかける。
すると。
ふわり。
――美桜が順一に微笑みかけたのだった。
ザワリ。
胸がざわつくと同時に嫌な感覚が手指を這い始める。
二人の元に駆けていきたい。
だけど、足が地面に縫い付けられたかのように動いてはくれなかった。
「順一と似合いだよな。あんな可愛い子が義妹になるなんて羨ましいな、恭司。可愛いからって、うっかり好きになるなよ。まあ、お前の好みのタイプの子じゃないし、お前には恋人もいるしな」
難波のどことなく嬉しそうな声が――今の恭司には不協和音に聞こえたのだった。