冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
「まあ、確かに俺もあの子のことを詳しくは知りはしないけどさ。お前のことを好きかどうかも、順一が実は本命なのかも、俺には分からない。でもさ、お前のことを気に掛けてるのは間違いないんだって」
「そんな気休め聞きたくもない」
すると、難波が何かに気付いて手に取ると恭司の眼前に示した。
――美桜が残したメモだ。
『恭司さんへ……』
恭司の目が彼女の筆跡を辿った。
全てを読み終える頃、恭司はベッドから立ち上がる。
そうして、途中まで留めていたシャツの釦を閉じ始めると、勇み足でクローゼットにしまっていたスーツに袖を通し始めた。
「どうした? 恭司?」
難波の問いかけに恭司が返事をはじめる。
「その記事、どうせまた禄でもない奴らが書いたものだろう? 発信したのが新聞社かテレビ局か知らないが特定を急げ。分かったら俺が話をつけるから、電話を回せ。俺のおかしなニュースを書いたやつには借りを返してもらう。それと――」
恭司のスマホにメールが来ていた。
目を通した後、口の端をゆるりと吊り上げる。
日曜日に美桜と過ごす時間を割いてまで京都に向かって――結果的には良かったようだ。
「ああ、あとはまあ俺がやる。それと――俺には行く場所が出来た」
「お、おう……? 行く場所って? どこに行くんだ、恭司?」
突然恭司が活動をはじめたので、難波がついてこれていないようだ。頭の上に疑問符がいくつも浮かんでいるかのようである。
「新宮の本家だ。俺の飼い猫を好き勝手されるのは不愉快だ。今と昔じゃあ時代が変わったんだって思い知らせてやるよ、あの忌々しい一族にな」
難波が小さな悲鳴を上げる。
「そんな、暴力的なのは……!」
「……同じ穴のムジナにはならねえよ」
恭司がサラリとした黒髪をかきあげる。
彼の瞳にはすっかり光が戻っていた。
とはいえ、まだ彼女を傷つけたのではないかと不安は残る。
脳裏に浮かぶのは――美桜の笑顔だ。
「お願いだから、どうか……俺にやり直す機会を与えてほしい」
恭司は窓の向こうの青空を見つめた。
「今からお前を迎えに……ああ、この場合は新宮家に攫いに行くのが近いのか?」
そうして、彼女の残した置手紙をそっとスーツの胸ポケットにしまった。
そばには昨日中に仕上がっていた黒い箱もある。
「お前に伝えたいことがあるんだ、美桜」
ドイツの時とは……誰かに逃げられたり捨てられるのを怖がって、追いかけなかった時とは違って――恭司は今度こそ美桜のことを追い掛けて手に入れるために、外へと飛び出したのだった。