冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい


「まあ、確かに俺もあの子のことを詳しくは知りはしないけどさ。お前のことを好きかどうかも、順一が実は本命なのかも、俺には分からない。でもさ、お前のことを気に掛けてるのは間違いないんだって」

「そんな気休め聞きたくもない」

 すると、難波が何かに気付いて手に取ると恭司の眼前に示した。
 ――美桜が残したメモだ。

『恭司さんへ……』

 恭司の目が彼女の筆跡を辿った。
 全てを読み終える頃、恭司はベッドから立ち上がる。
 そうして、途中まで留めていたシャツの釦を閉じ始めると、勇み足でクローゼットにしまっていたスーツに袖を通し始めた。

「どうした? 恭司?」

 難波の問いかけに恭司が返事をはじめる。

「その記事、どうせまた禄でもない奴らが書いたものだろう? 発信したのが新聞社かテレビ局か知らないが特定を急げ。分かったら俺が話をつけるから、電話を回せ。俺のおかしなニュースを書いたやつには借りを返してもらう。それと――」

 恭司のスマホにメールが来ていた。
 目を通した後、口の端をゆるりと吊り上げる。
 日曜日に美桜と過ごす時間を割いてまで京都に向かって――結果的には良かったようだ。

「ああ、あとはまあ俺がやる。それと――俺には行く場所が出来た」

「お、おう……? 行く場所って? どこに行くんだ、恭司?」

 突然恭司が活動をはじめたので、難波がついてこれていないようだ。頭の上に疑問符がいくつも浮かんでいるかのようである。

「新宮の本家だ。俺の飼い猫を好き勝手されるのは不愉快だ。今と昔じゃあ時代が変わったんだって思い知らせてやるよ、あの忌々しい一族にな」

 難波が小さな悲鳴を上げる。

「そんな、暴力的なのは……!」

「……同じ穴のムジナにはならねえよ」

 恭司がサラリとした黒髪をかきあげる。
 彼の瞳にはすっかり光が戻っていた。
 とはいえ、まだ彼女を傷つけたのではないかと不安は残る。
 脳裏に浮かぶのは――美桜の笑顔だ。

「お願いだから、どうか……俺にやり直す機会を与えてほしい」

 恭司は窓の向こうの青空を見つめた。

「今からお前を迎えに……ああ、この場合は新宮家に攫いに行くのが近いのか?」

 そうして、彼女の残した置手紙をそっとスーツの胸ポケットにしまった。
 そばには昨日中に仕上がっていた黒い箱もある。

「お前に伝えたいことがあるんだ、美桜」

 ドイツの時とは……誰かに逃げられたり捨てられるのを怖がって、追いかけなかった時とは違って――恭司は今度こそ美桜のことを追い掛けて手に入れるために、外へと飛び出したのだった。
< 137 / 179 >

この作品をシェア

pagetop