冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
恭司side
美桜が退室した後、恭司に向かって難波が話しかけていた。
「話が長かったから心配したぞ。それであの子は?」
「もう帰したよ。あの女性社員は白だ。間違いない。俺たちを貶めるために、何か意図があってここを受けたわけじゃない。たまたまだ」
自分たちから企業スパイ疑惑をかけられているなどと、美桜が知ったら悲しむに違いない。
だから、先程はその件について美桜本人に話題を持ち出すのを避けた。
「泣かせてないだろうな?」
難波の問いかけに、恭司がため息をついた。
「難波、お前が企業スパイじゃないかって煩かったんだろうが? それに、仕事中には泣かせないさ。他の奴らに聞かせたくないからな」
「は? ……まあ良い。恭司、それで、あの子が順一の部下だったかどうかは分かったのか?」
「前の職場の話をわざわざ聞く必要はない」
「てっきりそれを聞くんだと思ってたんだがな」
難波がガリガリ頭をかいていた。
恭司は淡々と答えた。
「聞いても意味がないさ」
「じゃあ、何で呼んだんだよ?」
難波は納得がいっていないようだ。
「お前と接触してる段階で、ある程度、順一には情報は漏れていると思ってる」
「俺はたまたますれ違っただけだよ。情報を漏らしたりはしない」
「だったら、順一の元部下だって同じようなもんさ。仮にあの女性社員が順一と今も連絡をしていたところで、大した問題はない。入社してばかりで、さして重要な情報は持っていないからな」
恭司自身が気をつけさえすれば良い。
噂については、彼女の秘密裏に処理する。
過去を思い出させて嫌な気持ちさせたりして、彼女に余計な負担はかけたくないからだ。
他の異性とは連絡をとっている素振りはなかったし、とっていたら顔にもっと出るタイプだ。
一瞬悩んでいる雰囲気だったが、真面目すぎるから、宅配なんかで男性と喋ったのも数に数えたりして考えこんだりしていたんだろう。
(あいつは男を誑かしたり、そんな器用な女じゃない)
恭司は見て見ぬふりをした自分のことを正当化した。
難波がミーティングの準備に出ていく。
「飯作って待ってくれてるなら、はやく帰ってやらないとな」
恭司が呟いた、その時。
ちょうどスマホの電話が鳴ったため応答する。
「ああ、良かった。イブには間に合いそうか。助かった。サイズは小さくて大丈夫だ。華奢なんだ」
脳裏に美桜の姿が浮かんでくる。
――まだ過ごした時間は短い。
だけど、こんなにも明るい未来を想像した女性は初めてだ。
噂の件だったり、恭司とは因縁がある新宮傘下の会社勤めの彼女の父親という障害は、まだ残っているが……。
「指輪まで準備して、ガラじゃねえな、本当に」
恭司は美桜が喜ぶ姿を想像して、ふっと微笑んだのだった。