冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
第3章 身体だけの関係?3
数日後の夕方。
恭司のマンションにて、美桜は恭司にコートを差し出していた。
「はい、どうぞ」
恭司が手に取ると、コートを羽織る。
そんな姿もモデルみたいに様になっていた。
「ご飯、うまかった。じゃあ、残りの仕事を片付けにまた出かけてくる」
「はい、分かりました」
「年末年始だから忙しいが、明日はかろうじて休みだから、昼ぐらいからは一緒に過ごせると思う。せっかくだから、今晩も泊まっておけよ」
「今晩は恭司さんがいらっしゃらないんですよね?」
「俺がいないからって、そんなに寂しがるなよ」
「いないのが寂しいというか、いないのに泊まるのが申し訳なくって」
「合鍵渡してあるだろう? 自分の家だと思ってくれて構わない。明日帰ってきたら、じっくり遊んでやるから。それじゃあな」
恭司が美桜にちゅっと口づけると、颯爽と去って行った。
美桜は自身の唇に指を当てた。
触れた感触を思い出してドキドキしてしまう。
「自分の家だと思って、か」
実は社長室に呼ばれて以来、黒猫ミオの世話を口実に恭司から毎晩呼び出されていた。
食事を作っているのだが、多忙な中、わざわざマンションに戻ってきて、食事をしてから仕事にまた向かってくれるのだ。
(わざわざ戻ってきてもらうのは悪いから良いですって言っているのに、『熱いうちに食べたいから』って言うんだもの)
それから黒猫ミオと一緒に遊んで、彼が帰ってくる前に帰ろうとするのだが……。
『夜遅くに女性が一人で歩いて帰るのは危ないだろう。泊まれ』
そのままお泊りになってしまい、なしくずしで毎晩……。
社会的地位のある人間はやはり体力があるのだろう。
毎晩、ベッドの上では優しいし、抱きしめられると幸せではあるのだが……。
(私たちの関係って、やっぱり何なんだろう? セフレじゃなかったら……最近は食事も作っているし、体も提供してくれる家政婦さん?)
猫のミオのことは心配だし、二度目の就職先になるし、あまり頻回には職場を交代したくない。
そのため、ひとまず恭司の言うことを聞くことにしているのだけど……。
(会うたびに……その……恋人でもなんでもないわけだから、やっぱり、セフレって奴なんじゃ……)
美桜は少しだけ頭を抱えていた。
(今週はほとんど恭司さんのマンションで過ごしたけど、自分の家だと思えって言われるなんて)
期待したらダメだと分かっているのに、どうしても心のどこかで期待してしまう自分がいる。
ふと、過去の記憶が脳裏を過る。
(新宮部長の愛人だって裏で色々言われてしまっていたけれど……まさか、次の職場で本当に言われたようなことになっちゃうなんて……)
流されやすい自分の性格に嫌気が差すというか、少々落ち込んでしまった。
恭司は、「上司と部下として出会ったわけじゃない」と言ってくるが、それならいったいぜんたい、自分は彼にとってどんな存在なのだろうか?
(もうずっと堂々巡りだ。恭司さんが帰ってきたら、明日思い切って聞いてみようかな?)
悩みは尽きない。
とはいえ……。
「みゃお」
「ミオちゃん」
美桜に黒猫ミオが飛びついてきた。
ケージに入れたままは可哀そうだと訴えたら、飼い主の恭司が放し飼いを許可してくれたのだ。
「くよくよしていても仕方がないもの。ミオちゃんの世話は楽しいから、楽しまなくちゃね」
「にゃあご!」
美桜の頬に黒猫ミオが鼻を擦りつけてくる。
自分を慕ってくれる猫を抱きしめて、幸せな気持ちになるのだった。