冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい

 特に二十代の若い世代の者たちは、仕事を選ぶにあたって私生活の充実をまず第一に考えるようで、恭司の考えが好きで就職を希望してくる者たちも多いようである。
 だからこそ、休日の今日、会社の付近であまり社員たちがいないという考えなのは、美桜だって分かるのだけれど……。

「あんた、俺と一緒のところを職員たちに見られたくないのか?」

 恭司が訝し気に眉根を寄せる。
 美桜は慌てて返した。

「恭司さんが嫌だとかそういうんじゃなくて、おかしな噂が立って恭司さんにご迷惑がかかるのが嫌なんです」

「俺は別に困らないって、前に話しただろう?」

「ですが……会社の近くに住んでいる社員さんだって多いでしょうし……」

 美桜はしどろもどろになった。
 恭司がどう考えているのかがよく分からないが、別に付き合っているわけでもないし、社長と社員が休日に一緒に歩いているところを誰かに見られたら、おかしな噂が立つのは必至だろう。

「……私も困りますけど、それ以上に、恭司さんがおかしな噂で足を引っ張られるのは嫌なんです」

 それにいつか恭司と結婚する女性が現れたとして、過去の女性を気にするタイプの女性だったとしたら、恭司もその女性も可哀想だ。

「まあ、俺は多少足を引っ張られたところで痛くもかゆくもないし、夜だからそんなに気にする必要はないと思うが……あんたがそんなに色々気を遣うんなら、別に少しだけ離れても構わない」

「はい。ありがとうございます」
 
 恭司がすぐに美桜から離れて歩きはじめた。
 彼の脚が長いせいもあって、どんどん背中が遠ざかっていく。
 自分から離れて歩くことを提案したくせに、少しだけ寂しい気持ちになる。

(自分で言ったんだから仕方ないもの)

 美桜がしょんぼりと俯いていると……。

「ああ、ほら、あんた、本当に顔に出るな」

「ひゃっ……!」

 なんと、立ち止まっていた恭司に美桜は顔面からぶつかってしまう。

「いたた、……あ……!」

 そうして、肩を抱き寄せられると――隣同士で歩きはじめる。

「恭司さん、離れて歩くって言ったじゃないですか」

「つべこべ言うな。本当は一緒に歩きたいくせに。すぐに自分の意見を押し殺そうとするのは、あんたの悪い癖だ。俺は言った通りの言葉の意味しか言わない。気を遣うな。行くぞ」

 恭司に諭される。
 なんだか胸がきゅうっと疼いた。

「それは社長命令ですか?」

 すると。
 
「今の俺は――ただの恭司だよ。命令じゃなくてお願いだ」

「お願い……」

 美桜の胸の内が明るくなっていく。
 すると、恭司がイタズラっぽく笑った。

「まあ、あんたが命令の方が好きなら、命令してやっても良いけどな」

 美桜は頬を膨らませて抗議した。

「別に好きじゃないですもん」

 冬だけれど、恭司に抱き寄せられているおかげで、なんだかポカポカ温かかったのだった。
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