冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい
 夜の公園にて。
 美桜は衝撃を受けていた。
 黒猫ミオを抱き抱えた恭司と、元上司・新宮部長へと交互に視線を送る。

(まさか恭司さんと新宮部長が兄弟だったなんて……)

 恭司が新宮部長をきつく睨みつける。

「どうしてお前がここにいる?」

「恭司兄さん、数年ぶりの再会なのに、冷たいなあ」

 新宮部長は穏やかな表情のままだ。というよりも、ややおどけた調子で挑発的な態度ではないか。基本的に温厚な性格なので、やや攻撃的な一面が覗いたため驚いてしまう。
 恭司が冷ややかな口調で告げた。

「そいつから手を離せ。嫌がっているだろう? 離さないなら俺がお前の腕を捻り上げるぞ」

「怖い、怖い。兄さん、大人になったのに攻撃的なところは変わってないんやね。別に嫌がってないよな? 美桜ちゃん?」

 美桜は新宮部長から手を握られてしまっていることを思い出した。
 言葉で「嫌だ」と告げるのは勇気がいる。けれどもちゃんと意思表明はしないといけない。
 心臓の音が煩いが、とりあえず深呼吸をする。
 首を横に振った後、ちゃんと前を見据えると、きっぱりと告げた。

「新宮部長、離してくださいますか?」

「そうか、残念」

 新宮部長は悲しそうに眉根を寄せると、美桜の手から手を離して、一歩だけ後ろに下がった。
 恭司が近づいてくるなり、美桜の肩を力強く抱き寄せてくる。

(あ……)

 彼に抱き寄せられると一気にホッとした。力が抜けて、そのまましゃがみ込んでしまいそうだったが、なんとか耐える。
 恭司に抱きかかえられた黒猫ミオが尻尾を逆立てると、新宮部長を威嚇していた。

「猫ちゃんにまで嫌われてしもうた」

 そうして、新宮部長がまっすぐに美桜のことを見据えてくる。

「美桜ちゃん、俺は君のことを諦めとれへん。また会いに来る」

 美桜の代わりに恭司がきっぱり言い返した。

「こいつがお前のことを嫌がってるって分かんないのかよ?」

「恭司兄さん、美桜ちゃんがどんな人柄の子か知らんの? すごく優しい子なんや。俺のこと、嫌がってるわけないやろ? 会社に勤めてる時、ちゃんと俺の言うことを聞いてくれたし。自分こそ、この子の何なん?」

 恭司が眉を顰めた。

「会社の上司の命令を聞いていただけだろ。俺はこいつの……」

「だったら、自分の方がどうなん? 俺は部長やったけど、あんたは会社の最高責任者やろ? あんたの方が権力強いんやあらへんか? 美桜ちゃんの断れない性格を知らんわけやないよねえ?」

 恭司が息を呑んだ。
 新宮部長がフンと鼻を鳴らす。

「まあええ。なあ、美桜ちゃん、恋人はあかんかったら、昔みたいに順一兄ちゃんって呼んだってや?」

 願いを聞いた後、美桜が「それはできません」と答えようとしたのだけれど、それよりも早く新宮部長が返してきた。

「今度は邪魔が入らんところで二人で会おうな、またメールする。それじゃあね」

 そうして――新宮部長が嵐のように去って行ったのだった。
< 92 / 179 >

この作品をシェア

pagetop