誰も愛さない天才王の覚醒 〜俺が新・王? 両親が命懸けで守ってくれた国なので、十人の最強の寵妃と完璧に経営してみせます〜

エピソード50:戴冠式と十人後宮の幕開け

王都の誇る大聖堂に、クインテラ王国の全貴族が集結していた。

重々しいパイプオルガンの音が響き渡り、金糸で彩られた王衣を纏ったアルフレッドが、ゆっくりと大聖堂の中央を歩む。

その傍らで見守る大太后エレナの胸には、誇らしさと、どこか切ない不安が入り交じっていた。

息子はあまりにも強く、そしてあまりにも冷たくなってしまった。

教皇の手により、眩いばかりの王冠がアルフレッドの頭上に載せられる。

「新王、アルフレッド・クインテラ陛下の誕生である!」

教皇の宣言と同時に、歓声が上がる……はずだった。

しかし、高壇に立ったアルフレッドが手を掲げると、その場の空気が凍りついた。

「全貴族に告ぐ。ハミルトン公爵をはじめとする者たちが、私に『唯一の正妃』を立てるよう迫ってきた」

大広間にざわめきが広がる。

ハミルトン公爵はニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。

己の娘グレースが王妃として指名されると確信していたからだ。

だが、アルフレッドの口から飛び出したのは、貴族たちの予測を根底から砕く言葉だった。

「――よって、私は『正妃』を一切置かない!」

「な……なに!?」

ハミルトン公爵の顔から笑みが消えた。

「我がクインテラ王国は本日より、新たな法を発布する。『側室十人制』である!  我は十人の側室を迎え、全員にまったく同等の権限と地位を与える。特定の正妃を作らず、十の家門の均衡をもって国政の盾とする!」

「正気か!? そんな無茶な法があるか!」

「我がハミルトン家を愚弄する気か!」

怒号を上げる大貴族たちに対し、アルフレッドは氷のように冷たい視線を向けた。

「文句のある者は、十人の枠を辞退しても構わん。ただし、その枠は他の家に与えられ、お前たちは王家の恩恵から永遠に弾き出されることになるがな」

完璧な不意打ちだった。

一人の王妃を巡る争いを完全に無効化し、断れば利権を失う。貴族たちはぐうの音も出ず、震え上がることしかできなかった。

かくして、母エレナが見守る中、物語は親世代の愛憎劇から、子世代による「最強の頭脳戦」へと完全にシフトしたのだった。
< 10 / 61 >

この作品をシェア

pagetop