初恋が君に届くまで
「へえ、そんなバーがあったんだ。お客様にもよい宣伝をしてくれてるんだね」
「はい」

つむぎは植木にルーチェのことをかいつまんで話し、営業課に相談してみてもいいかと尋ねる。

「そうだね、いいと思う。綾瀬さんも一緒に行ってもらえるかな? 経営戦略に関しては我々は素人だから」
「はい、かしこまりました」

早速その足で、つむぎと丈は営業課のフロアに向かった。

「おっ、つむぎちゃん! どうしたの?」

オフィスに足を踏み入れると、30代の男性社員の岡田が声をかけてきた。

いつも明るく人当たりのよい岡田は、営業成績も常にトップだ。

「つむぎちゃん」と呼ばれるが決して馴れ馴れしい訳ではなく、営業課には渡辺さんが3人いる為、ほかの人にも下の名前で呼ばれている。

「岡田さん、お疲れ様です。ちょっと営業課長にお話がありまして」
「そうなんだ。課長ー! つむぎちゃんが折り入って話があるそうでーす!」

こういうノリは営業課ならではだろう。

奥のデスクにいた課長の稲村(いなむら)が顔を上げる。

「おっ、どうしたつむぎちゃん。イケメン連れて」
「あ、はい。皆さまにもご紹介を。こちらはネクサス・インテグレーションの綾瀬さんです」

丈が「初めまして、綾瀬です」と頭を下げると、わらわらと周りを取り囲まれた。

「ああ、君が噂の! いやー、もうシゴデキのオーラが違うね」
「かっこいいなー。営業課にも来ない? 契約バンバン取れそう」

丈はにこやかに、「いえ、自分はパソコンオタクなだけですので」と答える。

「控えめなところがまたいいね。大人の余裕って感じで。年はいくつ?」
「26です」
「若いっ!」

見かねた稲村が「ほら、いつまで捕まえてるんだ。困ってらっしゃるだろ」と言うと、岡田達は「どうぞどうぞ」と一斉に道を空けた。
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