初恋が君に届くまで
丈に片思いの相手がいるという噂は、またたく間に広まった。

「もう、友ちゃんたら」

つむぎが咎めると、友美はシュンとする。

「ごめん。だってみんながすごい勢いで問い詰めてくるんだもん」

噂をなかったことにすることはできず、つむぎは丈との打ち合わせで会議室に向かう際、それとなく謝った。

「すみません、綾瀬さん。その……噂が広まってしまって」
「噂って、なんの?」
「山崎さんと3人でランチした時に綾瀬さんがおっしゃったことです。今は恋人がいなくて、その……」
「ああ、好きな人がいるからってことか。別に構わない。女の子はそういう噂話で盛り上がるんだろ? それに俺も頑なに隠しておきたい訳ではないから」
「そうなんですね。なんだか大人の余裕がありますよね、綾瀬さんって」

すると肩を並べて歩きながら、丈がふとつむぎの顔を覗き込んだ。

「君も同い年でしょ」
「そうですけど。え? お話ししましたっけ? 私の年齢」
「ああ、まあ、そうだな。少し前に聞いたと思う」

そうだったかな?とつむぎが首をひねっていると会議室に到着し、丈がドアを開けてつむぎを促す。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

考えるのはやめて、つむぎは打ち合わせに集中した。
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