初恋が君に届くまで
翌日。
出社すると丈はつむぎに声をかけた。

「渡辺さん、おはよう。今日も打ち合わせをお願いしていいかな」
「綾瀬さん、おはようございます。昨日はありがとうございました。打ち合わせですね、小会議室で大丈夫ですか?」
「ああ」
「かしこまりました。10時から2時間で予約しておきます」
「ありがとう」

デスクに戻ると、パソコンから資料を印刷する。

プリンターの前に立ち、出てくる用紙を確認しつつ、さり気なくつむぎの様子をうかがった。

淡い水色のフレアスカートと、オフホワイトのベルスリーブのブラウスがよく似合っている。

真剣にパソコンの画面を見ながらキーボードを打つ横顔は、可愛らしさと大人っぽさが入り混じったような魅力があった。

カシャンと最後の用紙が排出されてプリンターが止まり、丈は我に返る。

トントンと用紙を揃えると、デスクに戻って打ち合わせの準備を進めた。

これからつむぎと二人で打ち合わせなのだと思うと、仕事も忘れて心が浮き立ってしまう。

いけない、と慌てて表情を引き締めた。

(毎日一緒にいられるのは嬉しい。けど、それもあと少しだ)

予定では、フィラートに常駐するのはあと1ヶ月だけ。

そのあとは自社に戻ってほかの案件もこなしつつ、必要な時だけここに顔を出すことになっている。

(作業は順調だから予定通りに進むだろう。けど、わざと引き伸ばしたくなるな)

そんなことまで考える自分に驚く。
公私混同など、これまでしたことはなかったのに。

(いや、仕事をきっちり終わらせて、彼女にも告白する。この1ヶ月の間に)

丈は己にそう言い聞かせた。
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