初恋が君に届くまで
初恋をいつまでも
10分ほど走って着いたのは、まるでハリウッドスターの邸宅のような広くて豪華なゲストハウス。

つむぎは丈に手を引かれて車を降り、両側にズラリと並んだスタッフ達に「おめでとうございます」と声をかけられながら、シャンデリアが見事な吹き抜けの館内に足を踏み入れた。

「どうぞこちらへ」

促されて、真っ白な扉の前に丈と並んで立つ。

その向こうからマイクの声が聞こえてきた。

「皆さま、お待たせいたしました。いよいよ新郎の綾瀬丈くんと、新婦つむぎさんの入場です!」

華やかな音楽と共に扉が左右に大きく開かれ、つむぎは思わず息を呑んだ。

開放的な明るく広い会場に、たくさんの懐かしい友人達。
誰もが皆、笑顔で二人に拍手を送っている。

「きゃー! 渡辺さん、きれい」
「綾瀬くんも、かっこいい!」
「おめでとう! ほら、お二人。どうぞ進んで」

つむぎと丈は顔を見合わせると、腕を組んだままゆっくりと歩き始めた。

鳴り止まない拍手の中、つむぎは丈に手を引かれ、豪華な花で飾られたメインテーブルに着く。

二人で深々とお辞儀をすると、より一層拍手の音が大きくなった。

「えー、それでは皆さま。これより我らが青嵐高校のスター、綾瀬丈くんと、校内一のモテ男だった丈くんに愛を捧げられた渡辺つむぎさんの結婚パーティーを始めます! 司会は元3年1組と3年2組のクラス委員が務めます。どうぞよろしくー!」

わあーっと拍手が盛り上がり、そのままの雰囲気でパーティーが始まった。

つむぎも丈も内容は知らされておらず、とにかくされるがままになる。

担任の先生や学年主任、生活指導の先生までいて、お祝いの言葉のあとに乾杯となり、皆は一斉にグラスを掲げた。

食事の合間にメインテーブルに集まり、皆で記念写真を撮る。

つむぎも丈も、あっという間に旧友に取り囲まれた。

「おめでとう、渡辺さん。すっごくきれいよ」
「え、そんな、ありがとう」

高校生の時はあまり話をしたことがなかったクラスメイト達に、つむぎは緊張の面持ちになる。

「でもやっぱりそうだったのかあ。綾瀬くん、絶対渡辺さんのこと好きだよねって、あの頃みんなで噂してたんだ」

そうなの?とつむぎは驚く。

「だってあんな場面を見ちゃったら、ねえ?」
「うんうん、もう少女漫画の世界だったもん」
「スチャッ、タタタタッ、ヒョイ、ビューン! だもんねー」
「かっこよかったー!」

ワイワイ盛り上がる女の子達の話に、つむぎは首をひねった。

「あの、なんの話?」
「あ、やっぱり気づいてなかったんだ。体育祭の応援合戦の練習の時、渡辺さん熱中症で倒れたことあったでしょ? それにいち早く気づいた綾瀬くんが、保健室まで運んだのよ」
「えっ、そうだったの? てっきり先生が運んでくれたのかと思ってた」
「綾瀬くんたら、まだ内緒にしてたのね。照れてるのかしら? かっこよかったんだよー、あの時の綾瀬くん。いきなり指揮台から飛び降りて走っていくから、なにがどうしたのかとみんなで驚いてたら、ふらっとよろけた渡辺さんが地面に倒れ込む前に抱き上げてね。『しっかりしろ!』って、お姫様抱っこで保健室まで一直線!大事な大事な俺の彼女って言わんばかりにね」

つむぎは驚きのあまり言葉が出て来ない。
チラリと隣の席を見ると、丈は友人に囲まれて笑顔で話をしていた。

「恋愛小説の実写版みたいだったわよ。でもね、そのあとどんなにあなた達の様子をうかがっても全く会話もないから、綾瀬くんの片思いなのかな? って話してたの。そのまま卒業しちゃったけど、同窓会のたびに綾瀬くん、渡辺さんが来るのを期待してたみたいだったよ。だからお二人が結婚するって聞いて、みんなでよかったねーって」
「あの、それ、本当の話?」
「ホントだって! あとで動画を上映するから、楽しみにしてて。私達、張り切って編集したんだ。お二人のピュアなムズきゅんラブ♡」

ねー!と顔を見合わせながら、女の子達は席に戻って行った。
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