返事も溺愛もキスのあとで
「もしかして、寿司が嫌いだったか?」

「いえ、大好きです……」

「そ、そうか」

(?)

急に頬をわずかに赤らめた雪瀬室長はカウンターの中央を手のひらで指し示した。

「ここに座るといい」

「では、お言葉に甘えて」

私が席に座ると雪瀬室長がさりげなく私の羽織っていたジャケットをさっとハンガーにかけてくれる。

「あの、すみません」

「構わない。俺が好きでやってることだ」

雪瀬室長は腰かけると、店主に握りはお任せすると話し、茶わん蒸しとだし巻きを注文した。

「ビール飲むか?」

「はい」

「大将、ビールジョッキでふたつ」

「あいよ」

私は熱々のお手拭きで手を拭き終わると、顔を横に向けた。

「あの、今日はお昼みっともないところをみせてすみませんでした」

「いや、俺こそ偶然とは言え資料室にいたせいで、泣いている君に声をかけることになった。流れから話を聞くことになったが、本当は言いたくなかっただろうなと思ってな……俺こそ、悪かった」

「そんなことありません……聞いて頂けてすこし気持ちが落ち着きました。私と彼のこと、社内で付き合ってることを知ってる人はいないので、室長に聞いてもらってなかったらずっと、自分で抱え込んでたと思います」

「俺で良かったらいつでも話を聞く。舞川さんは大事な部下だから」

目を逸らすことなく、真っすぐにそう言ってくれる雪瀬室長は会社でのクールなイメージと違って、なんだか心が騒がしくなる。
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