返事も溺愛もキスのあとで
無言の時間が数分過ぎれば、やっとあたしの殺意を察したのか、守が勢いよく土下座した。
「この通り、お願いだよっ! 由羅のためならなんでもするから別れないで」
「……なんでも?」
「うん、なんでもする!」
心の中に黒い感情が渦巻いてくる。
どうしてあたしがこんな目に遭わなければいけなのか全然わからない。
だって元はといえば、こんなキモい男と結婚するのは雛子先輩だったはずだ。
(まさか守がキモくて、マザコンだったって知ってたんじゃない?)
(そうよ、そうに決まってる)
(雪瀬室長を騙しただけじゃなくて、巧妙にあたしまで騙されてたってわけ……?!)
なぜ、いままで気付かなかったんだろうか。
今朝、守のあたしへのプロポーズを見ながら、雪瀬室長と馬鹿にしたように拍手していた雛子先輩の顔が浮かぶ。
(全部お膳立てされてたなんて……!)
(ゆるさない……っ)
(あんただけ幸せになんか、させない……!)
(道連れにしてやる)
あたしは床に膝をつくと、守の髪にそっと触れる。
「由羅?」
「守、親に会ってあげる」
「ほんと?!」
「その代わり、このままあたしと結婚したかったら、手伝って欲しいことあるんだけど?」
「なに? なんでもするよ!」
あたしは作り笑顔を浮かべると、守に耳打ちした。