返事も溺愛もキスのあとで



電車を乗り継ぎ、目的地の最寄り駅に到着する。

日曜ということもあって、ホームは人に溢れていて、階段を上って外に出れば、降り注ぐ太陽の光に思わず目がくらんだ。

(暑い、日傘持ってくればよかった……)

梅雨明けをした都内の今日の気温は三十五度の予報だった。

そのニュースを朝食を食べながら見ていたときは覚えていたのに、服装を選んでいる間に忘れてしまった自分が恨めしい。

とはいえ駅からホテルまでは徒歩十分程度だ。私は軽快な足取りでホテルへ向かっていく。

数分歩き、ホテルの外観が少し見えてきた時だった。前を行く高齢の男性がコンビニの前を通り過ぎた途端、ふらつくのが見えた。

(え……っ)

男性はちょうど植えられていた木に手のひらを突いたが、俯きがちで様子がおかしい。

私はすぐに駆け寄った。

「大丈夫ですか?」

「……あ、あ。少しふらついただけだから……」

そう言って男性は切れ長の目をゆっくりと細めた。

白髪を後ろに流し、しじら織りと思しきシャツを着ていてとても上品な方だ。

「いえ、でも……」

「もう大丈夫だよ。親切にどうもありがとう」

「とんでもないです」

この暑さだ。熱中症がよぎったが、大丈夫だと言われた以上は、どうしようもできない。

(大丈夫かな……)

(目的地まで送ってあげたいけど、迷惑だよね……)

男性はハンカチで額の汗をぬぐうと、再び歩き出そうとしたが、足元から崩れ落ちる。

「あ……っ!」

私はすぐに男性を肩で受け止めると、足元のおぼつかない男性を抱えるようにして、コンビニと建物の間の日陰に座らせた。

「大丈夫ですか?」

「……う……っ」

(大変……っ)

私はすぐに鞄の中から駅のホームで買ったペットボトルを取り出し、男性の首元に当てる。

そしてすぐに救急車を手配した。

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