返事も溺愛もキスのあとで
「違います、あの、ザルって聞くと男の人の反応ってマイナスって言うか……お酒に弱くてすぐ顔を赤くする方が可愛いって言うか」

実際、守にも言われたことがある。

私はビールとカクテル、日本酒と混ぜて飲んでも平気だが、守はお酒に弱くビール2本で酔って寝てしまうのだ。

それに比べていくらでも飲める上、顔色ひとつ変わらない私を見て「そう言うの男的にないわ」と言われたことがありショックだったことを思い出す。

それ以来、自宅でも缶ビールは一本だけ、外食先で守が飲まない時は我慢していた。

「ザルは可愛いだろう。俺は少なくともザルの女性は魅力的だと思う」

(ザルの女性が魅力的……なんて初めて言われた)

「……えっと、ありがとうございます」

「あ、いや。俺もザルだからな。一緒に飲める女性の方が楽しい」

「私も……お酒好きな方と飲めるの楽しいです」

「そうか」

雪瀬室長が切長の目をふっと細めると、つきだしのほうれん草と蓮根の煮浸しを食べ始める。

「お待たせしました、おまかせ握りです」

「わぁ、美味しそう」

檜の寿司下駄の上には旬の魚や軍艦が乗っていて、紫蘇の花が添えられている。

「向かって右から鮪2種、桜鯛、イカ、タコ、ほうぼう、菜の花、たまごです」

「ほうぼう?」

隣を見ればすぐに雪瀬室長と目があう。

「秋から春にかけて旬を迎える白身魚だ。柔らかく弾力もあって甘い」

「さすが雪瀬さん。私から話すことは無さそうですね。はい、こちらも出来上がりました」

目の前に置かれた茶碗蒸しの容器からはすでにいい匂いがしている。

「じゃあ、頂こうか」

「はい、頂きます」

お寿司はどれも今まで食べたお寿司で一番美味しくビールとの相性抜群だ。
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