返事も溺愛もキスのあとで
「ん。ほうぼうすっごく美味しいです」

「それは良かった」

「ほうぼうのポテトチップスとかどうですかね?」

「ははは、斬新な上に仕事熱心だな」

雪瀬室長が声を出して笑うのは初めて見たかもしれない。元々芸能人顔負けの端正な顔なのだ。笑顔の破壊力は想像以上で私は顔が熱くなるのを感じた。

(お酒のせいもあるのかな……なんかドキドキする……)

雪瀬室長は最後のたまごを口に放り込むと、茶碗蒸しを指差した。

「仕事と言えばだが、実はここの茶碗蒸しを一番食べて欲しかったんだ」

「え?」

「開けてみて」

丸い陶器の蓋を開ければ、すぐにポルチーニ茸が見えた。

「これ、ポルチーニ茸の茶碗蒸しですか?」

「ああ。寿司屋では珍しい上、俺が食べた茶碗蒸しの中で一番うまいと思うんだ」

私はすぐに陶器のスプーンで掬うと口に入れる。

「おいしいっ」

「だろう?」

「ポルチーニ茸のいいお出汁が出てて、香りもいいです」

私はすぐに頭の中で企画書のことを思い浮かべる。

「あ! ポテトチップスとポルチーニ茸を掛けるなら、ポルチーニ茸をパウダー状にしてポテトチップスにまぶすのはどうでしょうか」

「パウダー状ということは厚切りか?」

「はい、厚切りでパウダーが絡みやすいように断面を波状にカットするのはどうかと思っています」

「いいんじゃないのか。面白い」

「ありがとうございます」

いつも頭の片隅でこねくり回していた、企画の方向性が見えて安堵する。

そして目の前にまた新しいジョッキが置かれる。

「いい企画になることを期待している」

「はいっ」

唇を引き上げた雪瀬室長を見ながら、私は笑顔でジョッキを飲み干した。

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