返事も溺愛もキスのあとで
「姫原さんは?」

「それが、彼女のところは両親とうまくいってないようでな。弁護士経由で聞いた話だが、彼女の母親は、うちにそんな名前の娘はいないと言い張って、警察の方でどうにでもしてくれといっているらしい」

「そんなこと……」

「詳しい事情はわからないが、どうやら事故で亡くなった姉がいたようで、近所の人の話では、幼い頃の姫原は姉と比べられることによく不満を漏らしていたようだ」

「そう……」

結局、警察での取り調べでも姫原さんはどうして私にこんなことをしたのか、はっきりと答えることはなかったそうだ。  

もしかしたら、はっきりした理由はないのかもしれない。

ただなんとなく、気に入らない、なんとなく好きじゃない。そんな負の感情の一種は、人間なら誰しも抱くものだと私は思っている。

ただその感情をどうコントロールして、正しく誠実に生きるかは自分次第だろう。

正直、彼女に対して重い刑は望まないが、許せない気持ちはまだある。

でもそんな気持ちを心の隅に抱えていても良いことはひとつもない。だからできるだけ早く、手放したいと思っている。

愛する人のためにも、いつだってできるだけ心を清く持って、堂々と隣で笑っていたいから。

「大丈夫か?」

「うん。私は、誰かを憎むことに時間も心も使いたくないから」

「そうか」

「それに鷹哉さんがそばにいてくれたら、もう十分なの」

「わかった。あとのことは俺に任せてくれ」

「ありがとう」

微笑めば、彼が安堵したように微笑み返す。

たったそれだけのことで心はあったかい。

これからもただ願うのは、愛する人の隣でずっと笑っていられますように。
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