返事も溺愛もキスのあとで
「言葉の意味そのままです。あたし、雛子先輩のものぜーんぶ欲しいんですよ。仕事も男もね」

エレベーターが到着して、姫原さんがヒールの音を響かせながら、先に歩いていく。

姫原さんの言っている意味が全くわからない。

守を寝取っただけでは飽き足らず、雪瀬室長まで手に入れたいだなんて……。

そこまで私を目の敵にする理由はなんなのだろうか。そんなこと、いくら考えてもひとつも思い浮かばない。

私はきゅっと唇を結んだ。

そもそも他人が心の奥に隠している気持ちや、共感できない思考を理解しようと思うこと自体が無理な話だ。
それも生理的に受け付けない、身勝手な人間なら尚更至難の業だ。

(考えても無駄なことはやめよう)

だが、姫原さんがこのまま何もしないとは思わない。彼女の言動に注意しつつ、できるだけ仕事でも距離を取るべきだ。

(いまは一緒に携わってる案件もないし……企画のデータはちゃんとパソコンに保管してあるし大丈夫)

私はそう結論付けると気持ちを切り替えるために、朝、ブックマークしたコロッケのレシピをスマホに浮かべた。
< 70 / 190 >

この作品をシェア

pagetop