因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~
そうして二人は脱衣所を出て一緒に大浴場へと入る。霧のように視界を遮る一面の湯気の先に広がるのは、なんと岩風呂であった。一度に十人は入れるくらいの広さがあり、四方は木の壁で囲まれている。
「室内で岩風呂に入れるなんて、すごい……」
「ふふ。エリーゼ様のご実家ほどではないでしょう?」
事情を知らないレミアルに悪気はないが、エリーゼは実家のフェーリス家を思い出して気持ちが沈んでしまう。
あの家でのエリーゼの入浴は、使用人が使う簡易的な小さな浴室しか使わせてもらえなかった。しかも一番最後の冷めて濁った湯にしか入った事がない。
軽く身体を流してから二人は並んで岩風呂の湯に浸かる。エリーゼは長い金髪が浸からないように頭の上でお団子に結った。
二人とも全身に白いタオルを巻いて身体を隠してはいるものの、エリーゼはレミアルの見事に割れた谷間を見るとまた気持ちが沈んでしまう。
「レミアルさんって何歳なの?」
「20歳です。カイン様と同い年ですよ」
(私とも同い年なのに、こんなに色気が……羨ましい!)
エリーゼも20歳だが、どうしてこんなに発育に差が出てしまったのか……実家では粗末な食事だったので栄養の違いだと納得するしかない。
それにしても、なんで今になって自分のスタイルを意識しだしたのか、エリーゼには自覚はない。ただ、こんな貧相な身体を何度も抱いてアゼルは満足するのだろうか……と余計な事まで考えてしまう。
(やだ、私ったら! アゼルなんかに抱かれたくないんだから!)
湯加減とは別の理由で身体が熱くなってきて頬も紅潮してしまう。ふと隣のレミアルの顔を見ると彼女の頬も赤い。そしてどこか遠くを見つめながら俯き加減で話す。
「エリーゼ様には前世の記憶があるのですよね?」
さきほど中庭でカインと会話していた時に背後に潜んでいたのか、レミアルに話を聞かれていた。しかしエリーゼは返答に迷う。どこまで信じてもらえるか分からないからだ。
エリーゼが黙っていると、レミアルが独り言のように淡々とした口調で続ける。
「私、よく同じ夢を見るんです。遠い昔の魔国軍の隊長と恋仲で、でも私は敵国の隊長で……」
「……! それで、最後はどうなるの!?」
「魔国軍との戦いの最中で私が命を落とすという悲恋で終わります」
エリーゼは食い入るようにしてレミアルの話を聞いていたが確信した。前世での魔王アゼルが率いる魔国軍、その隊長はアーサーだったと。
今になってエリーゼは、前世にアーサーの存在もあった事に気付いた。エリーゼの蘇った前世の記憶は断片的であり、アゼルとカイン以外の人物については朧げな記憶しかない。
レミアルの前世もカインと同様に、魔国との戦いで命を落とした犠牲者の一人であった。
俯き加減のレミアルの瞳は長い睫毛が下がって可愛らしい。兵を率いる将軍のレミアルは今や完全に恋する乙女の表情になっていた。
「それで、その夢の魔国軍の隊長がアーサー殿に似てたんです。彼に違いありません。前世の夢だとしたら、これって運命ですよね……?」
エリーゼは先ほどの国境での対峙を思い返してみるが、甲冑で顔まで隠れたレミアルの素顔をアーサーは見ていない。しかも二人に前世の記憶はない。
それでも二人の因縁を知ってしまったエリーゼの心の底から何か熱いものが込み上げてくる。
(この二人……絶対に結ばせたいわ!!)
呪いもツンデレもないレミアルの純愛を応援したい思いに火がついた。
あの真面目な戦バカのアーサーに恋愛なんて程遠そうだが、レミアルのこの顔と身体を見れば前世の記憶がなくても落ちるだろう。悔しい事だがエリーゼよりも色仕掛けに向いているボディであり、甲冑で隠すのがもったいない。
しかしエリーゼは考えた。レミアルを味方に付ければウィリアム国で動きやすくなるし、お互いにとっても都合が良い。
エリーゼは急にレミアルの両手を握って強気に迫る。
「ねぇ、レミアルさん。私に協力してくれない? 私もレミアルさんの恋に協力するから」
「……はい、私にできる範囲でしたら」
岩風呂の湯に浸かりながら、聖女と将軍の二人は裸で協力関係を結ぶのであった。
「室内で岩風呂に入れるなんて、すごい……」
「ふふ。エリーゼ様のご実家ほどではないでしょう?」
事情を知らないレミアルに悪気はないが、エリーゼは実家のフェーリス家を思い出して気持ちが沈んでしまう。
あの家でのエリーゼの入浴は、使用人が使う簡易的な小さな浴室しか使わせてもらえなかった。しかも一番最後の冷めて濁った湯にしか入った事がない。
軽く身体を流してから二人は並んで岩風呂の湯に浸かる。エリーゼは長い金髪が浸からないように頭の上でお団子に結った。
二人とも全身に白いタオルを巻いて身体を隠してはいるものの、エリーゼはレミアルの見事に割れた谷間を見るとまた気持ちが沈んでしまう。
「レミアルさんって何歳なの?」
「20歳です。カイン様と同い年ですよ」
(私とも同い年なのに、こんなに色気が……羨ましい!)
エリーゼも20歳だが、どうしてこんなに発育に差が出てしまったのか……実家では粗末な食事だったので栄養の違いだと納得するしかない。
それにしても、なんで今になって自分のスタイルを意識しだしたのか、エリーゼには自覚はない。ただ、こんな貧相な身体を何度も抱いてアゼルは満足するのだろうか……と余計な事まで考えてしまう。
(やだ、私ったら! アゼルなんかに抱かれたくないんだから!)
湯加減とは別の理由で身体が熱くなってきて頬も紅潮してしまう。ふと隣のレミアルの顔を見ると彼女の頬も赤い。そしてどこか遠くを見つめながら俯き加減で話す。
「エリーゼ様には前世の記憶があるのですよね?」
さきほど中庭でカインと会話していた時に背後に潜んでいたのか、レミアルに話を聞かれていた。しかしエリーゼは返答に迷う。どこまで信じてもらえるか分からないからだ。
エリーゼが黙っていると、レミアルが独り言のように淡々とした口調で続ける。
「私、よく同じ夢を見るんです。遠い昔の魔国軍の隊長と恋仲で、でも私は敵国の隊長で……」
「……! それで、最後はどうなるの!?」
「魔国軍との戦いの最中で私が命を落とすという悲恋で終わります」
エリーゼは食い入るようにしてレミアルの話を聞いていたが確信した。前世での魔王アゼルが率いる魔国軍、その隊長はアーサーだったと。
今になってエリーゼは、前世にアーサーの存在もあった事に気付いた。エリーゼの蘇った前世の記憶は断片的であり、アゼルとカイン以外の人物については朧げな記憶しかない。
レミアルの前世もカインと同様に、魔国との戦いで命を落とした犠牲者の一人であった。
俯き加減のレミアルの瞳は長い睫毛が下がって可愛らしい。兵を率いる将軍のレミアルは今や完全に恋する乙女の表情になっていた。
「それで、その夢の魔国軍の隊長がアーサー殿に似てたんです。彼に違いありません。前世の夢だとしたら、これって運命ですよね……?」
エリーゼは先ほどの国境での対峙を思い返してみるが、甲冑で顔まで隠れたレミアルの素顔をアーサーは見ていない。しかも二人に前世の記憶はない。
それでも二人の因縁を知ってしまったエリーゼの心の底から何か熱いものが込み上げてくる。
(この二人……絶対に結ばせたいわ!!)
呪いもツンデレもないレミアルの純愛を応援したい思いに火がついた。
あの真面目な戦バカのアーサーに恋愛なんて程遠そうだが、レミアルのこの顔と身体を見れば前世の記憶がなくても落ちるだろう。悔しい事だがエリーゼよりも色仕掛けに向いているボディであり、甲冑で隠すのがもったいない。
しかしエリーゼは考えた。レミアルを味方に付ければウィリアム国で動きやすくなるし、お互いにとっても都合が良い。
エリーゼは急にレミアルの両手を握って強気に迫る。
「ねぇ、レミアルさん。私に協力してくれない? 私もレミアルさんの恋に協力するから」
「……はい、私にできる範囲でしたら」
岩風呂の湯に浸かりながら、聖女と将軍の二人は裸で協力関係を結ぶのであった。