因縁の魔王陛下と聖女令嬢~溺愛の呪いが解けない~
同時刻、同じ城の一室。広さの割にシングルベッドと本棚と机くらいしかない、シンプルで質素な部屋。
ここは戦バカ、もとい軍隊長アーサーの自室。グレーの髪と瞳と同色の寝間着姿で机に向かっている。
(聖女のいないカイン王子は大した戦闘力はない。だがエリーゼ様を盾にしてくる可能性がある)
アーサーは明日の侵攻に備えて軍事作戦を念入りに確認している。さすがの彼でも、まさかエリーゼがカインの戦力として参戦するとは予想できない。
そんなアーサーの後ろ、部屋の真ん中に正座している一人の女性がいる。メイド服のレミアルは緊張した面持ちで考え込んでいる。
(アーサー殿の部屋には入れてもらえた。次は……)
レミアルはエプロンのポケットからメモの切れ端を取り出す。それはセレンから手渡されたメモで、『アーサーを落とす手順』が書かれている。
まず最初に『就寝前にアーサーの部屋に入る』というのは簡単にクリアできた。なぜかアーサーは簡単にレミアルを部屋に入れてくれたのだ。
「あの……アーサー殿!」
思い立ったレミアルはアーサーの背中に向かって声をかける。
机に向かっていたアーサーは静かに立ち上がると振り向く。さらに床に片膝をついて跪く体勢でレミアルの目線の高さに合わせる。
その流れるような所作すらも、恋するレミアルの目には王子様のように見えて惚れ惚れとする。
「どうした。ウィリアム国はお前の母国だろう。思う所があるのか」
(アーサー殿は私を気遣ってくれている? あぁ、やっぱり優しいのだな、好きだ……)
もはやアーサーが何を言ってもレミアルはときめいてしまう。それにレミアルが母国を思うのは本当であり当然だった。
「……ウィリアム国軍には私の弟がいる。副将軍だったが、おそらく今は将軍になっている」
「強いのか?」
急にアーサーが食いついてきた。これこそがセレンによるアーサーを落とす手順、『軍事の話で気を引く』である。
それだけではない。そこには母国を敵に回したレミアルの軍人としての覚悟がある。
「あぁ、弟は強い。私よりもな。だから頼みがある。明日は私も軍人として参戦させてほしい」
「無理な話だ。お前はもう軍人ではない、メイドだ」
アーサーは多くを語らないが、レミアルはデヴィール国にとっては人質であり、ウィリアム国にとっては裏切り者なのだと言いたい。
どちらの立場として考えても、レミアルが戦線に立つ事は不可能だという判断であり気遣いでもある。
それすらも承知の上であるレミアルは引かない。
「私はアーサー殿の元で生きるために、母国と自分の過去に決着をつけたい。どうか戦わせてほしい!」
「お前はウィリアム国を裏切ってここにいる。デヴィール国と私を裏切らないと証明できるのか?」
「できる! 私はここで誓いを立てる!」
レミアルは立ち上がると、白いエプロンを外して黒いワンピースも脱ぎ捨てる。白い下着姿となり全身の肌を曝すとアーサーを見下ろす。
堂々とした態度のレミアルに恥じらいはないが、それを見ても眉ひとつ動かさないアーサーは男である前に軍人であった。
……それに、アーサーはレミアルの下着姿を見るのは初めてではない。
「私に色仕掛けは通用しないぞ」
「分かっている。これは誓いだ。私はアーサー殿に忠誠を誓う」
レミアルは床に両膝をついて腰を下ろすとアーサーの首の後ろに両腕を回して絡める。
下着姿になったのは、無防備になる事で忠誠の意を証明するため。そして身を捧げるという愛を証明するため。
レミアルは引き寄せたアーサーに唇を重ねる。アーサーがそれをどう受け止めたのかは分からない。
セレンの指示書のメモには『色仕掛けでキスをする』の文字があったが、レミアルはまだそこまで読んでいなかった。
忠誠とは愛を示す隠語。レミアルがアーサーに誓ったのは、愛という名の忠誠だった。
ここは戦バカ、もとい軍隊長アーサーの自室。グレーの髪と瞳と同色の寝間着姿で机に向かっている。
(聖女のいないカイン王子は大した戦闘力はない。だがエリーゼ様を盾にしてくる可能性がある)
アーサーは明日の侵攻に備えて軍事作戦を念入りに確認している。さすがの彼でも、まさかエリーゼがカインの戦力として参戦するとは予想できない。
そんなアーサーの後ろ、部屋の真ん中に正座している一人の女性がいる。メイド服のレミアルは緊張した面持ちで考え込んでいる。
(アーサー殿の部屋には入れてもらえた。次は……)
レミアルはエプロンのポケットからメモの切れ端を取り出す。それはセレンから手渡されたメモで、『アーサーを落とす手順』が書かれている。
まず最初に『就寝前にアーサーの部屋に入る』というのは簡単にクリアできた。なぜかアーサーは簡単にレミアルを部屋に入れてくれたのだ。
「あの……アーサー殿!」
思い立ったレミアルはアーサーの背中に向かって声をかける。
机に向かっていたアーサーは静かに立ち上がると振り向く。さらに床に片膝をついて跪く体勢でレミアルの目線の高さに合わせる。
その流れるような所作すらも、恋するレミアルの目には王子様のように見えて惚れ惚れとする。
「どうした。ウィリアム国はお前の母国だろう。思う所があるのか」
(アーサー殿は私を気遣ってくれている? あぁ、やっぱり優しいのだな、好きだ……)
もはやアーサーが何を言ってもレミアルはときめいてしまう。それにレミアルが母国を思うのは本当であり当然だった。
「……ウィリアム国軍には私の弟がいる。副将軍だったが、おそらく今は将軍になっている」
「強いのか?」
急にアーサーが食いついてきた。これこそがセレンによるアーサーを落とす手順、『軍事の話で気を引く』である。
それだけではない。そこには母国を敵に回したレミアルの軍人としての覚悟がある。
「あぁ、弟は強い。私よりもな。だから頼みがある。明日は私も軍人として参戦させてほしい」
「無理な話だ。お前はもう軍人ではない、メイドだ」
アーサーは多くを語らないが、レミアルはデヴィール国にとっては人質であり、ウィリアム国にとっては裏切り者なのだと言いたい。
どちらの立場として考えても、レミアルが戦線に立つ事は不可能だという判断であり気遣いでもある。
それすらも承知の上であるレミアルは引かない。
「私はアーサー殿の元で生きるために、母国と自分の過去に決着をつけたい。どうか戦わせてほしい!」
「お前はウィリアム国を裏切ってここにいる。デヴィール国と私を裏切らないと証明できるのか?」
「できる! 私はここで誓いを立てる!」
レミアルは立ち上がると、白いエプロンを外して黒いワンピースも脱ぎ捨てる。白い下着姿となり全身の肌を曝すとアーサーを見下ろす。
堂々とした態度のレミアルに恥じらいはないが、それを見ても眉ひとつ動かさないアーサーは男である前に軍人であった。
……それに、アーサーはレミアルの下着姿を見るのは初めてではない。
「私に色仕掛けは通用しないぞ」
「分かっている。これは誓いだ。私はアーサー殿に忠誠を誓う」
レミアルは床に両膝をついて腰を下ろすとアーサーの首の後ろに両腕を回して絡める。
下着姿になったのは、無防備になる事で忠誠の意を証明するため。そして身を捧げるという愛を証明するため。
レミアルは引き寄せたアーサーに唇を重ねる。アーサーがそれをどう受け止めたのかは分からない。
セレンの指示書のメモには『色仕掛けでキスをする』の文字があったが、レミアルはまだそこまで読んでいなかった。
忠誠とは愛を示す隠語。レミアルがアーサーに誓ったのは、愛という名の忠誠だった。