金髪悪魔の正体
「使えるリード分かんねえな…」


使い物にならないリードも捨てずに一緒に入れているせいで、いい音が鳴るリードがどれだったか分からなくなってしまうのは木管楽器あるあるだ


「このマークなんだ、捨て…?」


小さく呟く手元のリードを覗くと、裏面に鉛筆でレ点のようなマークがつけられている



「あの・・・すみません、触ってもいいですか」


「え」


「失礼します」


私は両手で伊倉さんの細長くて白い指ごとリードを包み込むと、少しだけ目を瞑った



「何・・・」


「これ良いリードじゃないですかね?これで演奏してみてください」


「え・・・」



戸惑いつつも、言われたとおりにマウスピースにリードを装着して演奏する



♪~


重厚だが軽快なサックスの音色が部屋に響き渡り、彼はマウスピースを咥えたまま小さく頷いた



「よし。完了」

「ありがとうございます!」


自分のマウスピースを取り外し、リペアしたサックスを手際よく元のケースに戻す



サックスを仕舞い終え、パチリとケースの蓋を閉めたところで

彼はケースをこちらに渡しながら不思議そうな顔をした



「さっき、よく分かったね。あのリードが…」


「いやぁ、なんとなくの勘ですよ」


「そう?」



私はケースを受け取って、改めて深々と頭を下げてお礼を言う


「伊倉さん、本当に本当にありがとうございました!私も、このサックスの持ち主の子も、グループの子も、このフェスのためにずっと準備してたんです。だから、伊倉さんは私たちの恩人です!」


「え・・・」


「世界一かっこいい悪魔で、ヒーローです!」
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