毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 森の外まで連れ出されると、そこに待機していた馬車に乗せられた。
 拘束される事もなく、普通に座席に座らされたリィラはずっと下を向いている。

 ふと視線を感じて顔を上げると、正面の座席に座っている男がこちらを凝視している。先ほどリィラを抱きかかえた男性だった。
 歳は20代だろうか。美しい金髪に赤い瞳。人の感情らしきものを感じさせない冷たい瞳は、やはり先ほどの魔物の瞳に似ている。

「あの、あなたは……」
「名はアレン。近衛兵だ」

 リィラが言い終わる前に名を名乗ったアレンだが、リィラはそれを信じなかった。

(そんなはずはない。アディール王国の近衛兵・アレンは死んだって……)

 センティから王国の事は色々と聞いていたが、アレンという近衛兵の話は特に印象に残っている。
 アレンは今日のセンティと同じように森で魔物に襲われて死んだと聞いた。センティの話が本当ならば、目の前のアレンは偽者で偽名と考えられる。

 だがもう、そんな疑問はどうでもいい。もうすぐ自分は処刑される身なのだから。そう思うと、もう何も怖くはない。

「私は死刑になるの?」
「……まず王があなたに会う」

 何を聞いてもアレンは無愛想に短い言葉で返してくる。しかし罪人を『あなた』と呼ぶのは丁寧すぎる気がする。
 アディール王国は王が罪人の前で直々に裁きを下す制度なのだろうか。

 その後は沈黙が続き、気が付いた時には馬車が停車した。王国の城に辿り着いたのだろう。

「降りるぞ。ついてこい」

 アレンは先に馬車を降りようとして背中を見せる。近衛兵を名乗る割には油断と隙だらけだと思う。

(私、罪人じゃないの?)

 罪人の護送というよりは単なる送迎に思えてしまう。リィラの毒の事にも触れずに気にしていない様子であった。
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